以下、朝日新聞デジタル版(2017年10月3日05時00分)から。
「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法に懸念を表明していた国連特別報告者のジョセフ・カナタチ氏(マルタ大教授)が来日し、日本弁護士連合会が主催した都内のシンポジウムで2日、講演した。日本政府の法案審議の進め方を改めて批判し、同法にプライバシー保護の規定などが欠落していることを指摘した。
特別報告者は国連の人権理事会から任命され、国やテーマ別に人権侵害がないか調査し、公表する役割を無償で担っている。「共謀罪」法が国会で審議中だった今年5月、カナタチ氏は安倍晋三首相宛ての書簡で「プライバシーと表現の自由を過度に制限する可能性がある」と指摘。政府は同法施行後の8月、外務省のサイトに「(カナタチ氏の)指摘はまったく当たらない」と反論する文書を掲載した。
講演でカナタチ氏は、同法の審議について「政府には90日で法案を可決しようという意図が読み取れた。(国連特別報告者として)プライバシー保護策について日本政府と十分に議論する期間が無く、法が押しつけられた」と振り返った。
国会では、監視社会につながる、などとの懸念が論じられた。カナタチ氏は「警察や情報当局から独立したチェック機関こそ、民主主義国家に必要だ。法の支配の担保が無い監視は、してはいけない」と指摘。「諜報(ちょうほう)機関による市民の監視をチェックする独立の機関や、監視された市民を救済する措置が日本にないのは冷徹な事実だ」などと語った。(後藤遼太)