以下、朝日新聞デジタル版(2017年10月9日05時00分)から。
安倍首相の解散表明から2週間、衆院選があす公示される。
きのうまでのメディアや日本記者クラブでの党首討論で見えてきたのは、各党首がアピールする争点の裏にある、「語りたがらない争点」である。
だがそれは臨時国会の冒頭、審議に一切応じないままの解散の理由にはならない。憲法53条に基づく野党の召集要求を3カ月も放置した末にである。
北朝鮮にどう向き合うかは、対話と圧力のどちらに力点を置くかの違いはあれ、各党の差は実は大きくない。選挙で問うというより、むしろどうやって国際社会の力を結集するか、国会で各党が論じ合うべき課題だ。
なぜ冒頭解散なのか。共産党の志位和夫委員長は首相に「森友、加計学園疑惑隠し。これ以外にない」とただした。その通りだろう。
「安倍1強を倒す」と言いながら、自民党との近さがいっそう鮮明になった。
外交・安保政策は自民党と「違いはない」と明言。9条を含む憲法改正の議論にも意欲をみせる。半面、自民党との対立軸と位置づける「消費増税凍結」「2030年原発ゼロ」は、財源や実現へのプロセスが相変わらずあいまいなままだ。
小池氏はさらに、みずからの立候補を否定し、選挙後の首相指名投票で党としてだれに投じるかは「選挙結果をふまえて考える」と明確にしない。これでは政権選択選挙とは言えない。
見えてくるのは、選挙後に自民党と連携する可能性だ。
定着したかに見えた「自民・公明」「希望・維新」「立憲民主・共産・社民」の三つどもえの構図自体があやしくなる。
政権交代に期待して希望の党に一票を投じたら、自民・希望の大連立政権ができた――。有権者にとって、そんな事態も起きかねない。
事実上の野党第1党である希望の党が自民党と手を結べば、緊張感ある政治は実現しようがない。7月の東京都議選の惨敗を受けて、表向き憲法改正には慎重姿勢に転じていた首相が、再び「憲法への自衛隊明記」を訴え出したのも、小池氏の姿勢が反映しているように見える。
どんな政策を、だれの責任の下で進めるのか。選挙前にはっきりさせることが、小池氏の有権者への最低限の責務だ。
各党が語りたがらない本音を互いにあぶり出す。そんな論戦を期待する。