「(あすを探る メディア)「3ない」立憲、支えたネット 津田大介」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2017年10月26日05時00分)から。

 自民・公明の与党が大勝した今回の衆院選は、メディア――とりわけネットと政治の距離という観点で眺めると、あとから歴史的な転換点として位置づけられる可能性がある。

 今回の選挙戦の報道を見ると、新聞やテレビは従来通りの情勢分析が中心だったが、ネットメディアでは政治家の発言やネットで流れる言説の内容を確認し、情報の正確性や信憑性を評価する「ファクトチェック報道」が目立った。

 (中略)

 今回の総選挙は、ネットを利用した政党の情報発信にも注目が集まった。丁寧に編集された動画や、共感を呼ぶ「中の人(選挙スタッフ)」のツイートが話題を呼び、立憲民主党の公式ツイッターアカウントのフォロワー(読者)数が、開設からわずか3日で、政党では最多だった自民党ツイッターアカウントのフォロワー数を抜いたのだ。
 
 (中略)

 …今回の選挙の出口調査を基にした年代別投票先を見ると、立憲に投票した人は主に40〜60代の中高年層だ。データを見る限り、立憲のツイッターは若年層ではなく、30〜40代の無党派層の一部を取り込むことに成功し、そこに元々リベラル派だった高齢者の浮動票が加わることで今回の結果につながったのだろう。
 一方で、2013年の参院選から解禁されたネットを利用した選挙運動としては画期的な面も見られた。10月12日にツイッターとウェブサイト上で個人寄付を呼び掛けたところ、わずか9日で8500万円を超える寄付が集まったのだ。結党直後で組織力、広報力、資金力に乏しい同党をネットが支えたのは疑いがない。希望の党との議席数の差が5だったことを考えると、ネットも含めた情報発信の巧拙が野党第1党の座を巡る明暗を分けた可能性もある。(中略)
 日本では長らく地盤(組織力)、看板(知名度)、かばん(資金力)の「3ばん」がなければ選挙に勝つことはできないと言われてきた。ネットで個人から寄付を定期的に集める環境が整い、その政党に支持が集まり議席を伸ばせば、将来的に政党助成金や企業団体献金を廃止することも現実味を帯びてくる。予想外の善戦を見せた立憲のメディア戦略は、新たな参加型民主主義の可能性を示しているのかもしれない。
 (つだ・だいすけ 1973年生まれ。ジャーナリスト・政治メディア「ポリタス」編集長)