「生活保護費 母子加算削減に怒り悲鳴「負の連鎖招く」」

 以下、毎日新聞(2017年12月18日 22時00分(最終更新 12月19日 00時30分))より。

 生活保護費の生活費相当分の受給額最大5%カットが決まり、受給者や支援者らからは憲法25条が保障する「生存権」がさらに脅かされることを懸念する声が相次いでいる。

 前回の見直しで受給額は平均6.5%カットされ、全国の受給者が「憲法違反だ」などとして減額取り下げを求める訴訟を起こしている。弁護団メンバーの猪股正弁護士は「前回の影響を見ずに再度引き下げるのは問題だ」と憤る。

 生活保護を受けていない低所得世帯の消費額と同水準になるように受給額を決める方法にも異論が出ている。経済成長時には全体に合わせて受給額も上がっていた。だが、社会の状況は大きく変わっている。貧困問題に取り組む一般社団法人「つくろい東京ファンド」の稲葉剛代表理事は「貧困が広がるほど減額になる仕組みだ」と批判する。

 受給額だけでなく母子加算の月約4000円減額も決まった。関東地方の30代女性は「子どもにはやりたいことをやらせたい」と肩を落とす。気にかかるのは小学生から高校生の子どものことだ。

 女性は夫のドメスティックバイオレンス(DV)で離婚。病気で仕事ができなくなり、生活保護を受給した。前回の大幅カットの時には風呂に入る回数も減らして節約し、母子加算でしのいだ。今回は生活費も加算も減らされる。高校生の子どもは食べ盛り。熱心に部活動に励むが、その費用が賄えるかどうか。不安は募る。

 多くの受給者を取材してきた漫画家、さいきまこさんは、母子加算削減で国が目指す「貧困の連鎖の解消」が難しくなると指摘する。「母子世帯には母親に精神疾患のあるケースが少なくない。家庭をうまく切り回せず、出費は多くなりがち。衛生面や栄養状態も悪くなり、悪循環に陥る」と母子世帯の厳しい実情を訴える。【熊谷豪、西田真季子】