以下、朝日新聞デジタル版(2018年3月15日05時00分)から。
自民党の憲法改正推進本部が14日、憲法9条に「自衛隊」を明記するなどの改正条文案を提示した。ただ、森友学園問題で財務省による決裁文書の改ざんが明らかになり、北朝鮮情勢にも動きがあるなど、改憲議論の「前提」が崩れているとの指摘が出ている。
「今年、来年のうちに発議し、憲法改正を実現したい」。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は14日、憲法改正を掲げる運動団体「日本会議」系の都内の集会で、約800人の参加者に呼びかけた。改正実現に向けた署名を街頭や神社などで集め、1千万人に達したことも報告された。日本会議の田久保忠衛会長は「森友問題で改憲日程に影響が出るとの報道もあるが、不愉快。これまで通りの日程で議論してほしい」と語った。
財務省が決裁文書の書き換えを認めて以降、国会前では「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」などが呼びかけ連日の抗議デモが続く。こちらは安倍政権下での9条改憲に反対する署名を3千万人集める目標を掲げる。
1歳の息子を抱っこして参加した東京都立川市の塚越亜紀子さん(39)は、今回の財務省の問題について「民主主義の土台がむちゃくちゃな状態」と憤った。東京都世田谷区で学習塾を経営するという男性(32)も「改ざん問題では責任を官僚に押しつける一方、憲法改正では自分たちの考えを国民に押しつけようとしている」と語った。
市民や学者らでつくる「武器輸出反対ネットワーク」(NAJAT)は6日、北朝鮮の脅威などを理由に政府が進める長距離巡航ミサイルなどの導入に反対する集会を都内で開いた。
ただ、その日の夜、南北首脳会談の4月末開催が明らかに。北朝鮮は非核化に取り組む考えを示し、米国との首脳会談も5月までに予定される。NAJAT代表の杉原浩司さん(52)は「政権が錦の御旗にしていた北朝鮮の脅威は後退しつつある。9条に基づく『専守防衛』を逸脱するような防衛力強化や改憲論議をやめるべきだ」と話す。(清水大輔、編集委員・藤生明)