「(社説)森友と検査院 今度こそ核心の解明を」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2018年6月21日05時00分)から。

 一から検査をやり直す構えで臨んでもらいたい。

 森友学園財務省との国有地取引をめぐり、追加検査を進めている会計検査院が、おととい中間報告を国会に提出した。

 改ざんした決裁文書を検査院に提出した財務省の行為は、会計検査院法に違反すると明言し、かかわった職員を特定のうえ、悪質と判断すれば懲戒処分を求めるなどとしている。

 検査院は、憲法に明記された極めて重要な国家機関だ。その職務を妨害した行為は、強く非難されなければならない。

 検査院が昨年11月にまとめた最初の報告書は、国有地の売却額の不適切さを強く示唆したものの、「会計経理の妥当性について検証を十分に行えない」と限界を明らかにしていた。

 核心に迫る内容にならなかったのは、財務省などが文書を改ざんしたり隠したりしたからに他ならない。検査院は被害者といえるが、それを見抜けなかった責任を免れるものではない。今回の中間報告にも「批判を重く受けとめ、職責を十分果たせるよう一層努力する」と自ら書いている。今度こそ国民の期待にこたえる検査をして、存在意義を示してほしい。

 懲戒要求を検討する以上は、その職員らが、なぜ公文書の改ざんや破棄、隠蔽(いんぺい)という、およそ考えられない行為に走ったのかを検査院として解明し、故意や過失の程度を判断しなければならない。そしてそれは、社会が何より求めていることだ。

 財務省は、当時の佐川宣寿理財局長の国会答弁にあわせるためだったとし、理財局だけの判断で進めたと説明する。納得する人がどれだけいるだろうか。今月の朝日新聞世論調査では「決着はついていない」との回答が79%にのぼる。

 解明を期待された検察は、改ざん後も文書の根幹部分に変わりはないとして、関係者すべてを不起訴にした。政治家や官僚に都合よく公文書を作りかえても不問に付すという、民主主義を危うくし、「公」に対する信頼を失墜させた行いを、検査院はくり返してはならない。

 共産党が入手したという文書には、財務省国土交通省が最初の報告書の公表に先立ち、自分たちに都合のいい記載になるよう、検査院への対応策を協議した様子が書かれている。実際の報告書は、外形上はそれに沿う内容になっている。この経緯についても丁寧に説明し、国民の疑問に答える必要がある。

 土地代金の大幅値引きと、文書の改ざんはなぜ起きたのか。ごまかしはもはや許されない。