以下、朝日新聞デジタル版(2018年6月21日20時23分)から。
働き方改革関連法案に盛り込まれた高度プロフェッショナル制度(高プロ)について、朝日新聞社が全国の主要100社に聞いたところ、採用する方針を示したのは6社だった。31社は「採用するつもりはない」と答えた。政府は法成立を急ぐが、現時点で採用すると答えた企業は多くない。
採用・景気…あの人の見方は? 主要企業の社長が語る
5月28日〜6月8日に行った景気アンケートで、個別企業がどの選択肢を選んだかは公開しない条件で聞いた。対象は日本を代表する大企業で、業種もメーカーから非製造業まで幅広い。
高プロは、年収1075万円以上の一部の専門職を労働時間の規制から完全に外す規制緩和策で、今通常国会に提出された働き方改革関連法案に盛り込まれている。対象職種は成立後に省令で定めるが、金融商品の開発やアナリストなどが想定されている。政府・与党は今国会での成立をめざし、野党からは「過労死を助長する」などと批判が出ている。
高プロをどう評価するか複数回答で聞いたところ、「働き手の自由度や効率を高める」と評価する企業が最多の50社。「労働時間が長くなる懸念がある」は17社だった。
一方、法が成立した場合に採用するかについては、「採用する」が6社だった一方、「採用するつもりはない」が31社。「わからない」が51社と半数を超えた。「採用しない」と答えた企業からは、長時間労働を助長することへの懸念の声がめだった。
大阪ガスの藤原正隆副社長は「研究開発分野は対象になるが、健康障害が増えることが予想される。慎重な検討が必要。働き方改革とも矛盾する」と話す。三菱ケミカルホールディングスの越智仁社長も「成果で評価される働き方が可能になる一方、経営者は長時間労働是正に努める必要がある」と語った。
高プロの制度の詳細は、国会審議を経ずに決めることのできる省令などにゆだねられる方向で、まだ見えない部分が多い。TOTOの喜多村円社長は「まだ情報が少ない。ただ今後、制度の有効な運営も含めて検討していきたい」と指摘。日本生命保険の三笠裕司常務は「健康確保措置など、詳細が定まってから判断したい」と話した。
自由記述の中に、対象となる見込みの職種や年収要件に「該当する社員がいない」と回答した企業も14社あった。
肯定的な声では、「経営課題が高度化する中、高い専門性を持った人材が、より幅広く活躍していくことは社会全体に必要。多様な人材が、より生産性を高く働ける環境を築くべく活用していきたい」(サントリーホールディングスの新浪剛史社長)など、生産性向上を期待する意見が多かった。積水ハウスの仲井嘉浩社長も「今後適用範囲が広がることを期待している」と話した。(森田岳穂、田中美保)
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調査対象の企業(順不同)味の素、明治HD、アサヒグループHD、サントリーHD、日本ハム、東レ、東洋紡、ワコールHD、ミズノ、王子HD、花王、信越化学工業、富士フイルムHD、三菱ケミカルHD、旭化成、資生堂、武田薬品工業、JXTGHD、住友ゴム工業、太平洋セメント、旭硝子、TOTO、新日鉄住金、JFEHD、東京製鉄、三菱マテリアル、古河電気工業、コマツ、日本ガイシ、日立製作所、富士通、ソニー、東芝、NEC、アルプス電気、京セラ、パナソニック、シャープ、ダイキン工業、安川電機、トヨタ自動車、スズキ、日産自動車、スバル、三菱重工業、DMG森精機、キヤノン、大日本印刷、オムロン、コクヨ、鹿島、清水建設、積水ハウス、三井不動産、三菱地所、SOMPOHD、三井物産、三菱商事、高島屋、Jフロントリテイリング、エイチ・ツー・オーリテイリング、セブン&アイHD、イオン、ユニー・ファミリーマートHD、ローソン、ロイヤルHD、日本マクドナルドHD、すかいらーく、ファーストリテイリング、三菱UFJFG、みずほFG、三井住友FG、りそなHD、野村HD、松井証券、日本生命保険、東京海上HD、オリックス、三井住友トラストHD、日本通運、ヤマトHD、JR東海、東京急行電鉄、近鉄グループHD、日本郵船、ANAHD、NTT、KDDI、バンダイナムコHD、楽天、東京ガス、大阪ガス、ヤフー、JTB、西武HD、セコム、電通、リクルートHD、ユー・エス・ジェイ、ニトリHD (HDはホールディングス、FGはフィナンシャルグループ)