以下、朝日新聞デジタル版(2018年7月13日20時39分)から。
西日本を中心に大雨特別警報が発表されてから1週間が過ぎた。政権幹部の危機意識や防災情報の共有は当初から図られていたのか。救命・救助活動への影響はなかったのか。平成で最悪となった豪雨災害の初動対応を検証する。
7月に入り、台風7号が日本列島に迫った。通過に備え、関係省庁の課長級が集まって災害警戒会議を開いたのは2日午後。広範囲で雨が降り、各地の地盤は緩んでいた。
気象庁は5日午後2時に記者会見を開き、8日にかけて東日本から西日本の広い範囲で記録的な大雨となる恐れがあると発表。「早めの避難を心がけてほしい」と呼びかけた。
内閣府はそれから1時間半後に、各省庁課長らを集めた災害警戒会議を開いた。小此木八郎防災担当相が出席したのは、24時間の雨量が400ミリに達するとの予報に政府内の緊張感が高まったからだった。
この日は死者40人、行方不明者2人となった「九州北部豪雨」からちょうど1年。小此木氏は「大災害を改めて思い出し、対策に万全を期すように」と指示した。午後10時までに、京都、大阪、兵庫の3府県約11万人に避難指示が出た。安倍晋三首相らが自民党の国会議員による酒席の懇親会に出席したのは、この夜のことだった。
6日未明には、京都府が災害派遣要請を行い、自衛隊が出動。首相はこの日の朝までに、秋の自民党総裁選を視野に入れた翌日からの鹿児島・宮崎訪問の取りやめを決めた。午前中はオウム真理教元代表の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚の死刑を執行。そのニュースが駆け巡る中、気象庁が午前10時半に会見した。数十年に1度の重大な災害が起きる可能性が高まった際に出す「大雨特別警報」を「発表する可能性がある」と異例の警告を行った。
気象庁は午後5時10分以降大雨特別警報を8府県に出した。死者、行方不明者が相次ぎ、7日朝にかけ、自衛隊への災害派遣要請は7府県10件にのぼった。
政府が拡大する被害への対応を協議するため関係閣僚会議を開いたのは7日午前10時。首相は「事態は極めて深刻だ。救命・救助に全力を尽くし、被害の拡大防止に万全を期してほしい」と指示した。
政府が2016年の熊本地震以来となる「非常災害対策本部」(本部長・小此木防災相)を設置したのは8日午前8時だ。最初の大雨特別警報発表の約39時間後で、政府が把握する死者はすでに48人にのぼっていた。内閣府によると、対策本部設置の明確な基準はなく、気象情報や被害状況などを踏まえて首相が判断するという。
政府が首相の11〜18日の欧州・中東訪問取りやめを発表したのは9日。岡山県に11日、愛媛県には13日の被災現場視察が決まった。
初動対応について、首相は「政府一丸となって発災以来、全力で取り組んできた」。菅氏も13日の記者会見で「被害の拡大を想定し、いかなる事態にも対応できる万全の態勢で対応にあたってきた」とした。
(後略)
(岡本智、山岸玲、藤原慎一)