「自民の改憲案、公明との事前調整見送り 国会の場で協議」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2018年10月6日12時03分)から。

 自民党憲法改正案をめぐる公明党との事前の調整を見送る方針を固めた。自民党改憲4項目を単独で衆参両院の憲法審査会に提示し、野党も含めた国会の場で協議を進めるという戦略を描く。だが、改憲案の提示には野党側の反発が根強く、先行きは不透明だ。

憲法審会長、続投へ

 自民党は3月に自衛隊の9条明記などからなる「改憲4項目」をまとめ、憲法審での議論を目指した。しかし、通常国会では政権の不祥事が相次ぎ、与野党が対立。自民党は案の説明すらできないまま閉会した。議論への「呼び水」にしようと提案した国民投票法改正案も継続審議となった。

 与党の公明党自民党改憲案への慎重姿勢を崩さないまま。公明党山口那津男代表は「憲法審査会での議論が基本」と繰り返し述べ、与党による事前協議を否定してきた。与党推薦候補が約8万票差で敗れた沖縄県知事選がその姿勢に拍車をかけた。公明党幹部は「このままでは本当に(選挙で)負ける。改憲どころじゃない。しっかり考えた方がいい」と話す。

 そうした状況を踏まえ、自民党公明党との事前協議を断念。通常国会で目指した方針を維持し、自民案を議論の「たたき台」の位置づけで憲法審に提示したうえで、公明党や野党の一部と協議に入る道を探ることにしたとみられる。

 また、自民党衆院憲法審査会長の森英介・元法務相を続投させる。先の通常国会で目指していた改憲論議がほとんど進展しなかったことから、政権内には憲法審への不満がくすぶっており、会長交代案も検討されていた。

 潮目が変わったのは、3日に首相官邸で約1時間にわたって行われた首相と高村正彦・前副総裁の会談だった。関係者によると、会談では秋の臨時国会に党改憲案の提出を目指すと表明した首相発言について、高村氏が「総理の発言を『改憲4項目を憲法審査会で説明する』という風に私なりに解説している。そういう理解でいいですか」と尋ねると、首相は「それでいいです」と応じたという。

 2氏が確認したのは、憲法審で目指すのは「説明」であり、衆院100人か、参院50人の賛成者をそろえて出す「提出」ではない。会長を交代させても提出を目指すという強硬路線は採らないことを意味する。

 竹下亘・前総務会長は4日、記者団に「臨時国会は(改憲案を提出するには)物理的には相当厳しいと高村さんがお感じになり、(首相と)話されたんじゃないか。公明党がやりましょうという気にならなかったら(改憲論議は)動かない」と解説した。

野党に不信感、先行き不透明

 ただ、改憲に前のめりな首相への野党側の不信は通常国会時と変わらない。

 自民案提示の前段となる国民投票法改正案でも与野党は対立を続ける。野党は国民投票運動のテレビCM規制の必要性を訴える一方、与党側は改正案の成立を優先する。改正案の成立の見通しは立っていないが、採決を強行すれば本来の目的である自民案の提示も困難になりかねない。(磯部佳孝)