「下村氏、憲法審の幹事を辞退 野党へ「職場放棄」発言」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2018年11月14日07時05分)から。

 臨時国会憲法改正議論の前進をめざす自民党の戦略に狂いが生じている。下村博文・党憲法改正推進本部長が「職場放棄」と野党を批判したことに反発した野党各党が衆院憲法審査会の開催に応じない構えを強めたためだ。下村氏は13日、内定していた憲法審幹事の辞退に追い込まれた。

 「ちょっと過激発言で野党を硬直させた。十分気を付けたい」。群馬県みなかみ町で13日に開かれた自民党会合。下村氏は改憲論議に消極的な野党を「国会議員として職場放棄」と批判した9日の自身の発言への反省を口にした。

 今国会で憲法9条への自衛隊明記案を含む「改憲4項目」を提示したい自民は安倍晋三首相と気脈を通じる側近の下村氏を本部長に据え、議論の進展を狙った。下村氏は積極的に動いた。改憲論議を容認する国民民主党幹部と接触したほか、12日夜には日本維新の会幹部とも会食して憲法審の早期開催へ同意を取り付けた。だが、その下村氏の強気の発言が裏目に出た。

 CM規制を柱とする国民投票法改正案をまとめ、憲法論議に応じる構えを見せていた国民の玉木雄一郎代表は「敵対的な言葉をぶつけるようではとても円満な議論はできない。(幹事辞退は)当然だ」と反発。自民の二階俊博幹事長も「野党にものを言う場合は、慎重の上にも慎重であってもらいたい」と戒めた。

 立憲民主党や国民など6野党・会派の野党幹事は13日、定例日にあたる15日の衆院憲法審の開催をめぐって国会内で会談した。2015年の衆院憲法審で、参考人憲法学者が安全保障関連法を「憲法違反」と指摘し、憲法審が休眠状態になったことについて、無所属の会中川正春氏は「(野党が)審査会をやれと言っていたのに、開かなかったのはどこの党か」と自民を批判。6野党・会派は15日の開催は「難しい」との認識で一致し、下村氏に「けじめ」を求める声も飛び出した。

 その後、下村氏は憲法審の日程や議題を決める役割を担う幹事の辞退を申し出た。自民では後任に通常国会まで与党筆頭幹事だった中谷元氏を推す声が上がっている。

 野党内には、憲法論議に積極的な国民と慎重な立憲との間で足並みが乱れることへの懸念があったが、下村発言で足並みがそろう結果となった。国民の原口一博国対委員長は13日の会見で「憲法審は与野党が静かな環境で真摯(しんし)に議論を重ねてきた歴史がある。許しがたい」と批判。立憲幹部は「労せずして野党がまとまって良かった」と歓迎した。(石井潤一郎、寺本大蔵)
臨時国会自民党が想定する憲法審査会のスケジュール

11月15日 《衆院憲法審査会を再開。幹事を選任

  22日 《衆院》投票環境を改善する与党などの国民投票法改正案を可決

  28日 《参院》与党などの国民投票法改正案の審議入り

  29日 《衆院》CM規制を柱とする国民民主党国民投票法改正案を審議

12月5日 《参院》与党などの国民投票法改正案を可決

  6日 《衆院自民党改憲4項目を提示

  10日 会期末

(石井潤一郎、寺本大蔵)