以下、朝日新聞デジタル版(2019年4月7日18時0分)から。
イスラム教礼拝所(モスク)での乱射事件が起きたニュージーランド(NZ)。事件後の対応で評価を高めたのは、ジャシンダ・アーダーン首相です。頭に黒いスカーフをかぶって犠牲者たちを抱きしめる姿が報じられました。国内の若手政治家のひとりにすぎなかったアーダーン氏には、このわずか2年の間に様々な出来事が集中。人口が500万人に満たない国のリーダーながら、一気に世界中に知られる存在になりました。
銃乱射事件が起きた3月15日。アーダーン氏は自ら記者会見を開いて事件の状況を説明。犠牲者の中には移民や難民としてやってきた人たちもいるとして「彼らはNZを自分たちの家に選んだ。彼らは私たちなのだ」とイスラム教徒たちに寄り添う姿勢を見せました。翌16日にはクライストチャーチに飛び、イスラム教徒の人々や遺族と対面。このときから、黒いスカーフ姿で、悲しみとショックにうちひしがれる人々を抱きしめました。
NZは4人に1人が外国生まれの移民社会。もともと「侵略者」だった英国系の政府が、先住民のマオリと和解と共生の努力を続けてきた社会では、「少数派に寛容な多様な社会を守る」というメッセージとして、国民にごく自然に受け止められました。
並行して、16日には銃規制を強化する意向を表明。5日後の21日には、半自動銃を禁止する法案の概要をまとめる迅速な対応を見せました。
自身が「NZで最も暗い日の一つ」と呼んだ重大事件で、まさに顔の見える強いリーダーシップを発揮したアーダーン氏は現在、38歳。1893年に世界初の女性参政権が認められたNZでは、3人目の女性首相になります。
(後略)
シドニー=小暮哲夫