「トランプ大統領 米国製防衛装備品「大量購入」要求に波紋」

 以下は、すでに3週間以上も前のニュースだが、トランプ大統領来日時の記事である。
「非常に重要なのは、首相は(米国から)膨大な量の兵器を買うことだ。そうすべきだ。我々は世界最高の兵器をつくっている」。トランプ氏は米紙記者が尋ねた日本のミサイル防衛の質問に対して、一気に話し始めた。具体的な防衛装備品名まで言及し、日本がこれらを買うことで「我々に多くの仕事を、日本には多くの安全をつくる」と述べた。
 これに対し首相は「日本の防衛力を拡充していかなければならない。米国からさらに購入していくことになる」と応じた。トランプ氏の「バイ・アメリカン」(米国製品を買おう)に防衛装備品購入で即応する発言だ。
 北朝鮮に対して、日本がアメリカ合州国の装備を買えば大丈夫だとトランプ大統領は豪語した。けれども、本当にそうだろうか。
 「対話のための対話」では意味がない、全ての選択肢をもっていると言いながら、対話も外交も軽視して、とどのつまり、軍事力という武力で、殺し・殺される関係をつくりたいのではないか。
 軍事品の商売が優先ということでは、「死の商人」と同じではないのか。

 以下は、毎日新聞(2017年11月7日 21時06分(最終更新 11月7日 23時01分))より。

厳しい財政事情 安倍政権下ですでに増加…

 トランプ米大統領が来日時に、米国製防衛装備品の「大量購入」を要求したことが、政府内で波紋を広げている。厳しい財政事情から防衛費全体の急増は見込めないうえ、米国からの装備品購入は安倍政権下ですでに増加しており、これ以上の対応は難しいためだ。

 菅義偉官房長官は7日の記者会見で「自衛隊の装備品は防衛計画の大綱や(5年ごとに大枠の予算と購入品を定める)中期防衛力整備計画(中期防)に基づき、米国製を含めて計画的に取得している」と述べ、現行計画にない装備品の追加購入に慎重な姿勢を示した。

 トランプ氏は6日の記者会見で「日本が大量の防衛装備を買うことが好ましい。そうすべきだ」と訴えた。7日には「訪日と安倍(晋三)首相との友情が、我々の偉大な国に多くの利益をもたらす。軍事とエネルギーで莫大(ばくだい)な発注があるだろう」とツイッターにつぶやいた。

 近年、米国からの装備品購入は大幅に増加している。ほとんどは米政府が提示する条件を受け入れなければならない政府間取引の有償軍事援助(FMS)だ。FMSによる購入額は、2008〜12年度の5年間で計約3647億円だったが、安倍政権が予算編成した13〜17年度は、計約1兆6244億円と約4.5倍にはね上がった。ステルス戦闘機F35、垂直離着陸輸送機オスプレイ弾道ミサイル防衛対応のイージスシステム(イージス艦搭載)など高額装備品の導入が増えたためだ。トランプ氏が「世界最高の戦闘機」と言及したF35は計42機の購入が決まっており、陸上配備型の新型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入も決定済みだ。

 来年末には次期中期防(19〜23年度)を策定する。政府内にはその際に「トランプ氏の機嫌を損ねない程度に対応する必要はある」(外務省幹部)として、米国からの購入を一定程度増やすべきだとの声が出ている。将来的に導入することを想定している装備品について、購入時期を早めることも含めて検討する見通しだ。【秋山信一】

 アメリカ合州国銃社会である。
最近の銃乱射事件をひろいあげても、 10月1日、ネヴァダ州はラスベガスで、無差別銃乱射事件があった。
 ホテルの32階から、カントリーミュージックのフェスティバル会場(2万2千人以上の観客とスタッフ)に向けて犯人が自動式の銃を数千発発砲した。
 59人が殺害され、この数字は、死者数としては前年のフロリダ銃乱射事件を越え史上最悪と言われている。546人が負傷した。犯人は警官隊突入前に自殺した。
 11月6日、テキサス州は、サンアントニオから約50キロ南東の小さな町、サザーランドスプリングスの教会で銃乱射事件があった。26人が死亡。住民がライフルで応戦。犯人は自殺か射殺で死亡した。
 11月14日には、カリフォルニア州は、サクラメントから130キロ北の片田舎。小学校ほか、7か所で、ライフル1丁とハンドガン2丁による無差別発射。犯人も含めて5人が死亡。怪我人が10人。犯人は、警官らとの銃撃戦となり、警察官に射殺された。

 BBCによれば、2016年のアメリカ合州国では、実に1万1000人以上が銃によって死亡している。国内で発生する殺人事件に占める発砲案件の割合は、64%にのぼる *1
 世界各国で民間人がどれくらい銃を所有しているのか正確に知るのは難しいが、アメリカ合州国の約2億7000万丁はどのような推計でも群を抜いて突出している。
 アメリカ合州国では、住民100人あたりの銃の数は90丁に近い。
 30年以上も前の話だが、はじめてアメリカ合州国に滞在したとき、日本でいえばクイズ番組の「クイズ100人に聞きました*2で、家で銃をどこに隠しているのかというのが出題されていた。それほど、銃の所有は平均的だった。
  いま銃の値段はラップトップのパソコン並みだ。
 「全米ライフル協会(NRA)*3は、米国のあらゆる銃規制に反対するロビー団体で、市民がより多くの銃を持てば持つほど、国は安全になると主張」している。
 けれども、銃社会アメリカ合州国が、市民が銃をもっている分、危険な社会であるというのは、データからみて明らかではないか。
 以上は、国対国でも同じであろう。
 トランプ大統領は、アメリカ合州国の優秀な軍事的装備を買えば、安全になると言ったが、本当にそうだろうか。
 安倍首相は、「対話のための対話は意味がない」と言ったが、本当にそうだろうか。
「対話のための対話は意味がない」という姿勢は、そもそも憲法の理念に反している。さらに、実効性としても、極めて疑わしくはないか。とりわけ批判にさらされているトランプ大統領イエスマンで大丈夫か。

*1:ただし、BBCによれば、銃乱射による他殺よりも自殺のほうが数字的に多いとのことだ。「1982年以降のアメリカ合州国では、4人以上が犠牲になる大量射殺事件が90回起きている。しかし乱射事件の被害者は実は、米国で銃によって死ぬ人のごく一部に過ぎない。2016年に米国で銃によって死亡した合計1万1004人のうち、約5500人は自殺で、乱射事件の犠牲者は71人だった」

*2:100人に対して行ったアンケートを設問とし、その結果を推測して出場者が回答するという形式のクイズ番組。アメリカ合州国のクイズ番組"Family Feud"を土台としたもの。逆輸入型もあるが、日本のクイズ番組には、アメリカ合州国のクイズ番組を模したものが少なくない。

*3:「NRAは米国で最も強力な圧力団体のひとつ。国の銃政策に影響力を行使するため、多数の連邦議員に多額の寄付をしている」