以下、朝日新聞デジタル版(2021/2/5 20:40)から。
放送行政なども担う総務省
映像関連の事業を幅広く展開している東北新社
総務省幹部4人が放送関連会社側と無届けで会食していた問題で、幹部1人の会食相手は菅義偉首相の長男を含む2人だったことが5日わかった。この幹部は放送行政などを担当し、会社側の2人は衛星放送事業の子会社の役員を務めていた。会食費用やタクシー代は会社側が負担しており、事実上の「接待」だったことが鮮明になってきた。5日の衆院予算委員会で、総務省の秋本芳徳・情報流通行政局長は昨年12月の会食相手について、東北新社(東京)の幹部2人だと説明した。飲食代などは週刊誌報道の直前に返金したとしている。
首相の長男は「統括部長」の肩書で、衛星放送子会社「囲碁将棋チャンネル」の取締役を兼務している。もう一人は執行役員で、映画専門チャンネルなどを運営する「東北新社メディアサービス」の社長を務める。総務省は衛星放送について許認可の権限があり、2人は「利害関係者」にあたる可能性がある。
秋本氏は会食について、「衛星放送の話が出たかどうかという記憶はございません」と述べた。
総務省などへの取材では、秋本氏や谷脇康彦総務審議官ら4人が、個別に東北新社側の幹部と会食していた。菅首相の長男はすべての会食に出席していた。東北新社メディアサービス社長の執行役員も、複数回参加していたという。
国家公務員倫理規程は、利害関係者が費用を負担する接待を禁じている。割り勘でも、1人1万円超の利害関係者との飲食は事前届け出が必要だ。今回は幹部4人のうち3人が1万円を超えたが、事前の届け出をしていなかった。総務省は規程に違反する恐れがあるとして届けを出させ、飲食代の返済も指示した。
飲食などの事前届け出は、総務省全体で昨年春までの5年間で8件しかなかったという。
武田良太総務相は5日の会見で今回の問題について、「国民の疑念を招く事態に至ったことはおわびしたい」と謝罪した。調査は「速やかに事実関係を確定し、しかるべき対応を行う」としている。総務省職員に倫理順守を求める文書を3日付で出したことも明らかにした。
東北新社は映画などの制作・配給で知られる。複数の子会社を通じて「スターチャンネル」や「ザ・シネマ」といった衛星チャンネルも展開している。
東北新社の亡くなっている創業者は、菅首相と同じ秋田県出身。菅首相は4日、「いろんなご縁があって応援してもらったことは事実」と述べた。
長男は2006~07年に、当時の菅総務相の秘書官を務めた。その後に東北新社へ入った経緯について、菅首相は5日の衆院予算委員会で、「私から(就職は)一切依頼もしていない。子ども3人とも自分の考え方で就職している」と語った。(豊岡亮、藤田知也)
昨年12月の会食の状況
【東北新社側の出席者】○執行役員。映画専門チャンネルなどを運営する衛星放送子会社「東北新社メディアサービス」社長を兼務
○首相の長男の社員(部長)。衛星放送子会社「囲碁将棋チャンネル」の役員を兼務
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飲食代・タクシー代を負担
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【総務省側の出席者】
●秋本芳徳・情報流通行政局長。放送行政などを担当。総務省には衛星放送について許認可の権限がある
※国会での説明や総務省などへの取材をもとに作製