「コロナ禍で上がる指導者の支持 例外は日本のなぜ」

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数日前の記事だが、以下、朝日新聞デジタル版(2021/2/3 16:00)から。

 国家が危機に見舞われた時、政治指導者はいかに国民の生命・財産を断固守る気構えを示し、国民に協力と団結を促すことができるか、その資質と力量が試される――。世界的に新型コロナウイルス感染症が猛威を振るうなか、世界の指導者はどう振る舞い、国民にどんなメッセージを届け、そして国民はそのリーダーにどのような視線を向けているのでしょうか。感染拡大への不安と、相次ぐ行動制限で、さぞ国民の不満がうっ積しているのかと思いきや、欧州など主要国の指導者の支持率は軒並み上昇しています。ところが、その例外が、日本です。その差はどこから生まれるのでしょうか。主要国の支持率データを調べ、その背景を外国の友人や日本の専門家に聞いてみました。危機下におけるリーダーの資質を見極める「四つの教訓」も紹介します。

 「日本は感染拡大を比較的抑えているのに、なぜ安倍内閣の支持率が下がるのか」。コロナ禍における各国指導者の支持率を調べてみようと思ったのは、米国の友人から昨夏、こんな質問を受けたからでした。危機にある国家は、その指導者の下に結束しようという力学が働く。危機にあっては、指導者への支持率は上昇しがちだというのが政治学の通説だというのです。確かに、私も留学中に国際政治を勉強中に「Rally-Round-the-Flag(国旗の下に結集)」効果という言葉を目にしたことがあります。米同時多発テロの際も、危機を乗り越えようと、大統領の支持率は上向きました。それでは、コロナ感染拡大で、主要国の指導者の支持率はどのように変化したのでしょうか。

 米調査会社「モーニング・コンサルト」は、独自のオンライン調査で世界の主要国の大統領や首相の支持率を記録し、分析しています。世界保健機関(WHO)がコロナを「パンデミック(世界的大流行)」と認定した昨年3月11日から同月末まで、「コロナ初期」の9カ国の首脳の支持率を分析したところでは、英国、ドイツ、カナダ、豪州、フランスで首相の支持率は軒並み上昇。米国のトランプ大統領やメキシコのオブラドール大統領も微増しています。支持率が下落したのは、日本の安倍晋三首相と、「ちょっとした風邪」などとコロナ対応を露骨に軽視したブラジルのボルソナロ大統領だけでした。同社の報告書では、日本は感染拡大が比較的抑え込まれていたのに「安倍首相の地位が悪化している」と、他国リーダーとの傾向の違いを特筆しています。

 他の調査でも、同傾向にあります。シンガポールの調査機関「ブラックボックス・リサーチ」とフランスの「トルーナ」のオンラインでの共同調査では昨年4月、23の国・地域を対象に、コロナ感染症への指導者の対応を分析。政治指導者への評価で、トップは当時すでにコロナ禍から回復基調にあった中国で86%、23カ国・地域の平均が40%で、日本はなんと最下位の5%。調査責任者のデービッド・ブラック氏は「日本の低評価は、緊急事態宣言の遅れなどで、安倍政権のパンデミックへの対応への批判が続いていることと一致しており、コロナへの指導力のストレステスト(負荷試験)に明らかに不合格」とコメントしています。

 コロナ感染拡大の初期段階はともかく、昨秋には各国で感染拡大が深刻化し、死者も増大。ロックダウン(都市封鎖)などでお店の経営や市民生活が制限され、生活にも大きな影響を与えました。そうした昨秋以降の最近の支持動向はどうでしょうか。このメールの冒頭にあるグラフをご覧ください。調査対象国を13カ国に拡大した米「モーニング・コンサルト」の昨秋以降の調査では、それでも大半の国では支持率は横ばいです。韓国の文在寅、ブラジルのボルソナロ両大統領はやや下降。これまた例外は、9月に政権の座についた菅義偉首相の支持率でした。「支持率」から「不支持率」を引いた数値では、首相就任直後の昨年9月22日には、+34(支持56%、不支持22%)でしたが、今年1月21日段階で-35(支持27%、不支持62%)に急降下しています。

(後略)

(編集委員・佐藤武嗣)