サンフランシスコは安全な街とは言えない

 サンフランシスコは安全な街ではない。
 つい3日前に、こちらで知り合いになった日本人がゴールデンゲートパークで襲われてパスポートを取られた。
 アメリカ人の車好きは、自動車が唯一の交通機関であり、便利であるということもあるが、安全のためでもある。車の乗り降りのとき、よく襲われるが、走っているときは襲われることはない。ダウンタウンの一部は繁華街というよりも、今では荒廃化(deteriorated)してしまって、乞食と娼婦とアル中と無邪気な旅行者の吹き溜まりになっている。トラブルにもってこいの組み合わせとしてこれ以上のものはない。私が世話になっている肉屋さんをはじめ、マーケットストリートの店には健全な店もたくさんあるけれど、その一方で、旅行者から金を巻き上げることで基本的に商売を成り立たせている店も少なくない。そもそもサンフランシスカンはマーケットストリートではあまり買い物をしない。マーケットストリートから南へもほとんど行かない。夜出歩くことは間違ってもありえない。これらサンフランシスコの常識(street-wise)を私はすぐに学んだ。
 マーケットストリートの店は頑丈な鉄格子でシャッターを下ろしている店が多く、ところどころ鉄格子でもひん曲がっている箇所もある。近代法治国家というよりむしろ、ここは都会のジャングルなのだと、自分がしっかりしなくてはやられても仕方ないのだと、それ以来思うようになった。繰り返しになるけれど、マーケットストリートだって、全部が全部そうではない。毎日トラブルがあるわけでもない。庶民的な良さだってある。しかし、日本と比べて、やられる可能性は常に存在している。甘えて他人任せには、けっしてできないところなのである。