"The Rock Music Source Book"(1980)はロックミュージックの海を渡る羅針盤だ

"The Rock Music Source Book" Bob Macken, Peter Fornatale, Bill Ayres (1980)

 自分は、いわゆる洋楽、とりわけアメリカ合州国のロック音楽に興味をもっているのだが、イギリス語が大得意というわけでもないし、アメリカ合州国などの英語圏での生活が長いわけでもないので、アメリカ文化・アメリカ社会の常識など、知らないことばかりだ。したがって、大海を泳ぐ小魚のような気持ちで取り組んでいるのだが、正直はなはだ心もとない。

 唄を真剣に聴いても、大波も中波も小波も、わからない。

 たとえば、「津軽海峡・冬景色」(1977)という唄があるが、青森から北海道に向かう青函連絡船で、なぜ「北へ帰る人の群れは誰も無口」なのか。「無口」というコトバの意味を知ることは第一段階だが、それだけでは足りないことがわかるだろう。これはコトバの問題というより、文化的・社会的含意を受け取ることができ能力があるかという問題になる。まぁ、これを中波とすれば、また高田渡の「自衛隊に入ろう」(1969)という唄があるが、これは、コトバを理解した上で皮肉がわかるかという大波の問題になる。課題は、コトバの問題も押さえたうえで、小波・中波・大波がわかるかということになる。

 そんな微弱な俺に、的確に諭してくれるのが、本書だ。

 たとえば、「アメリカ」という項目に、ポール=サイモンのAmerican Tuneという唄が仕分けされている。この唄を知っている人なら、なるほどと思うことだろう。ウディ=ガスリーの This Land Is Your Land が入っている。これらは古典だろう。そして、Randy Newman の Sail Away も当然のことながら入っているが、決定曲という扱いとして仕分けされている。レコード名と発売元レコード会社も記入がある。

AMERICA

Classics

American Tune    Paul Simon

"There Goes Rhymin' Simon" (Columbia)

"Live Rhymin'" (Columbia)

"Greatest Hits, Etc." (Colubia)

This Land Is Your Land  Woody Guthrie

"Woody Guthrie" (Warner Brothers)

"Library of Congress" (Elektra)

Definitive Songs

Sail Away   Randy Newman

"Sail Away" (Reprise)

 たとえば、「世界の終末」。

APOCALYPTIC

Classics

Bad Moon Rising   Creedence Clearwater Revival

"Chronicle" (Fantasy)

"Green River" (Fantasy)

A Hard Rain's Gonna Fall   Bob Dylan

"The Freewhelin' Bob Dylan" (Columbia)

"Bangla Desh" (Apple)

 たとえば、エコロジーJoni Mitchell の Big Yellow Taxi が決定的な唄の一曲として仕分けされている。これも知っている人なら納得するはずだ。

ECOLOGY/CONSERVATION

Definitive Songs

Big Yellow Taxi  Joni Mitchell

"Ladies of the Canyon" (Reprise)

"Miles of Aisles"(Asylum)

 こんなふうにして、本書では、以下のようなコンセプトで仕分けされている。実際は細目もあってさらに細かく仕分けがされているが、ここでは細目は省略した。

America

Apocalyptic

Big Business

Brotherhood

Changes

Children

Cowboys/ Wild West

Death

Divorce

Drinking

Drugs

Ecology/ Conservation

Fathers

Freedom

Friendship

Growing Up

Hope/ Optimism

Hunger

Indians

Injustice

Life

Loneliness

Marriage

Money

Mothers

Old Age

Outcasts / Hobos

Outlaws / Criminals

Police

Politics

Poverty

Pregnancy

Prisons

Prostituion

Protest / Revolution

Racism / Prejudice

Rat Race

Religious Songs

Schools / Education Process

Self-Identity

Sexuality

Stardom

Suburbia

Suicide

Teen-Age Years / Adolescence

Urban / City Life

Violence

War and Peace

Women's Identity / Liberation

Working

Twenty Emotions and Themes of Love

 コンセプトアルバムの指摘もあって、たとえば、DRUGSの箇所では、Thematic Albums として、Neil Young の"Tonight's the Night" (Reprise)とある。

 ということで、本書は、ロックミュージックの海を渡る羅針盤として斜め読みしていると、時間を忘れて楽しむことができる。音楽ファンにおすすめの一冊となっている。