Randy Newman の "A Few Words in Defense of Our Country"(2008/2017)

A Few Words in Defense of Our Countr

 昨年(2017年)の1月20日は、ドナルド・トランプ氏が第45代のアメリカ合州国の大統領に就任した日。
 ノンサッチレコード(Nonesuch Records)は、この日にランディ・ニューマンの二曲を収録したシングルレコードを出した。
 一曲は"A Few Words in Defense of Our Country"*1であり、もう一曲は"Putin"である。
 前者は、アルバム"harps and angels"(2008)からのもので、後者はアルバム"Dark Matter"(2017)に収録された一曲。
 
 国を構成している人々は悪くもないし意地悪でもない、そうした私たちの国を擁護するために少し言わせて下さい(I'd like to say a few words in defense of our country, whose people aren't bad, nor are they mean)という歌詞で始まるこの唄は、当時のジョージ・W・ブッシュらの指導者たちによる政治を、世界史的にはもっとひどい政治状況があったとヒットラー(Hitler)やスターリン(Stalin)、ベルギー王のレオポルド二世(King Leopold of Belgium)等々を例にあげて相対化しつつ実は皮肉っているわけだが、トランプ大統領就任が続いている現在も説得力をもち続けていると言わざるをえない(だからこそ、ノンサッチからシングルレコードを出したのだろう)。
 「でもこんな時期だからこそ、お友達を活用できるでしょう」(”But times like these We sure could use a friend”)と述べて、ヒットラースターリン、レオポルド二世と列挙するところが秀逸である。
 唄の最後で、歴史を振り返れば、いかなる帝国も滅びているというように、帝国には別れを告げなければならないと、歴史的教訓をうたっている。
 

The end of an Empire is messy at best
And this Empire is ending
Like all the rest
Like the Spanish Armada adrift on the sea
We're adrift in the land of brave and the home of the free

 <拙訳>
 帝国の終わりはよくて混乱の極み
 そして、現在の帝国*2はこれまでの帝国と同じように終わりつつある
 海に漂流するあのスペインの無敵艦隊のように
 私たちも、勇者の国、自由人の故郷*3で、さまよいぐらついている

 最後のラインは「さようなら」(Goodbye)が3回繰り返されて唄が終わる。

まさにGoodbye
Goodbye
Goodbyeである。

音楽評論家のRobert Christgauは、Randy Nermanの"A Few Words in Defense of Our Country" を、2000年代のベストソングとして6位に評価している。「トーイストーリー」や「モンスターズインク」の音楽を担当しオスカーも受賞したランディ・ニューマンの、このシングルレコードの発売はすごいの一言だ。
"A Few Words in Defense of Our Country" は、モリカケ問題に揺れる日本の今日的政治状況にも通じる名曲と言わざるをえない。
 以下は、NPRのインタビュー。

https://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=93300109
 このインタビューの中で、ランディ・ニューマンは 、"I've been giving my opinions too much. In interviews that I've been doing, all of a sudden, I turned into, like, Warren Beatty - like an activist or something. Like, I used to hate it when showbiz people would be commenting on issues. But the way things have gone with this administration, it's in your face all the time. It's so noisy that you almost can't avoid talking about it with people. "と言っている。
 逐語訳でなく、大意をざっと訳せば、「自分の意見を言いすぎたかも。突然、ウォーレン・ベイティのような活動家のようになっちゃったかも。ショービジネスの人間が政治問題に首を突っ込むなんてことはこれまで大嫌いだったけれど、でもいまの政権は常に鼻についてしまって。やかましいから、どうしても話題にせざるをえない」というところだろう。
 インタビューでは、ほかにシーザーの箇所を削除するというNYT的な編集の上、New York Timesにも、"A Few Words in Defense of Our Country"の歌詞が掲載されたという話が面白かった。
 以下が、その2007年1月24日付The New York Times*4
https://www.nytimes.com/2007/01/24/opinion/24newman.html
 "A Few Words in Defense of Our Country"の歌詞のなかで、日本人にとって一番やっかいなのは、最高裁(Supreme Court)を皮肉っている箇所だろう。
 歌詞には出てこないが、インタビューでは、アントニン・スカリア(Antonin Scalia)*5サミュエル・アリート(Samuel Alito)*6クラレンス・トーマス(Clarence Thomas)*7の名前を話題にしている。保守的な原意主義者であるイタリア系アメリカ人の法律家を、おそらくはイタリア系のくせに、融通のきかない(tight-assed)連中だと皮肉っているわけだ。そしてアフリカ系アメリカ人であるクラレンス・トーマスに関しては、"And as for the brother, well Pluto's not a planet anymore either"と、つまり「プルート(冥王星)も、もはや惑星ではないからね」と、おそらくはブラザーであることを重んじるアフリカ系アメリカ人男性のくせに、奴はブラザー(兄弟)じゃないとクラレンス・トーマス氏を批判しているわけなのだろう。
 1930年にアメリカ人によって発見され第9の惑星として認知されたプルートは、ミッキーの愛犬の名前にもなるほど合州国で有名になったが、2006年に惑星の定義が見直され、惑星から降格となってしまった。惑星の座を追われたプルートの運命は、帝国の運命をも暗示しているに違いない。
 たしかなことをひとつ言う。
 ランディ・ニューマンのつくる唄は、深く、アメリカ合州国の常識や西洋社会の「知的枠組み」(FOR)の足りてない、俺のような日本人が近づくのはいつもやっかいだ。
 でも、いまはインターネットのおかげで、いろいろと情報を得られるのもたしかだけどね。

*1:Randy Newmanは"A Few Words in Defense of Our Country"をジョージ・W・ブッシュが大統領在任中であった2006年から演奏している。

*2:「この帝国」とは、アメリカ合州国をさすと思われる。

*3:アメリカ合州国をさす。

*4:レコーディングする前に歌詞をThe New York Timesに掲載したようだ。

*5:イタリア系アメリカ人として初めて合州国最高裁判所の判事に就任したことで有名。

*6:アメリカ合州国の裁判官、検察官。連邦最高裁判所・判事。サミュエル・アリートもイタリア系アメリカ人。

*7:アメリカ合州国最高裁判所の陪席判事。アフリカ系としては二人目。