教材としてのアメリカ合州国のクイズ番組

Total Television



 YouTubeがすごいということを書きたいのだけれど、その前に、アメリカ合州国のクイズ番組について触れなくてはならない。
 かけだし英語教師になったばかりの3年目にアメリカ合州国のサンフランシスコで英語研修を受け、合州国に8ヶ月ほど滞在した。そのときの経験をもとに、「アメリカ合州国のクイズ番組は最高の教材」というようなことを文章にして書いたことがあった。
 当時の私が書いたものから以下、少しだけ引用する。

 イギリス語を学習しようとするものにとって、テレビ番組ほど興奮させてくれるものはない。ここでのテレビ番組とは日本の英語講座番組のことをいっているのではない。そうではなくて合州国のテレビ番組のことだ。テレビ番組がおもしろいというのは、1981年に短いながらも8ヶ月ほど滞在した経験をもつ私の確信である。とくに言語活動を導入する材料としては、テレビ番組の中でも、とりわけクイズ(ゲーム)番組が最高である。
 もちろんテレビ番組といえば、子ども番組・ドラマ・ドキュメント・ニュース・教養・コメディ・スポーツ・バラエティショー・トークショーと、いろいろなジャンルがある。特に私はトークショーが好きで、よく観たものだが、日本人学習者とくに高校生に、どの分野の番組を推薦するかといえば、それはクイズ番組以外には考えられない。
 クイズ番組を推薦する理由は、聞いたり話したりという「言語活動」を学ぶのに最適な教材であるからに他ならないのだが、結論的に少し整理をして箇条書きすれば、次のようになる。

  1. 相対的な意味でしかないが、他の番組と比べてみて、それほどむずかしくない。会話の基本的表現が類型化しており、繰り返し登場するので、学習者が自然に覚えられる。
  2. 番組として比較的短いということ。クイズ番組の放映時間は通常30分である。またその中でも設問ごとに区切られており、部分部分で完結していること。外国語学習の場合、わけのわからぬコトバを聴くというのは集中力を必要とするのであって、「短く完結している」ということは教材作成上とても重要なことである。
  3. 「パスワード プラス」(日本の「連想ゲーム」)のように、「コトバ遊び」を基本とした番組が多く、コトバを学ぶのに適切であり、とくに必要な語感が体得できる。
  4. 「ファミリー フュード」(日本の「クイズ100人に聞きました」)のように、大衆的な番組が多いので、合州国に住む普通の人達が何を感じ、何を考え、何を知っているのか、その「常識」を学ぶことができる。

 
 以上のように書いて、Game Showsの出題や会話をディクテーションして、実証的に検討したことがある。
 日本のケーブルテレビで、いまやCNNなどのニュース番組を家庭でも契約して見ることができるが、クイズ番組やトークショーは見ることができなかったが、いまやそれが、YouTubeで見ることができる。
 高校生でも楽しめる簡単なクイズ番組Wheel of Fortune*1
英語を学んでいる方には、Password Plus, Tattletales, The $100,000 Pyramid,Scrabbleなどのクイズ番組をYouTubeで見てほしい。25年前に考えたことだけれど、こうした番組はかなり役立つと私は考えている。
 アメリカ合州国にどのようなテレビ番組があるのか知りたい方には、Alex McNeil著のTotal Television Book and CD-ROMをお薦めする。これは、1948年から現在までのテレビ番組を調べるのによい本だ。
 今は店をたたんでしまったけれど、東京は銀座のイエナ書店で1986年に入手した版を私は持っている。写真は、その新しい版である。

*1:逆にいえば、Wheel of Fortuneは、インテリが見る番組ではないと言えるだろう。