落語を聞く

志ん生

 最近は、映画を観るか、考えているか、本を読んでいるかという、変な生活だ。
 いまは落語を聞いてる。落語を聞いていたら、急に蕎麦が食べたくなり、ゆでて食べた。うまい蕎麦が食いたい。蕎麦を食って、落語を聞いていたら、叔父と祖父を思い出した。子どもの頃に上野の蓮玉庵なんかに連れて行ってもらったな。日本的なものを大事にする、そういう時代の匂いのする叔父や祖父であったからだろう。
 俺の暮らしぶりにはそうしたものが無くなりつつある。和服、温泉、鍋と日本酒。日本料理、お袋の味、山本周五郎…。
 私の子どもはコスモポリタン的になる可能性が強いが、いくらヨーロッパ的なマナーに反しても音を立てて食べるべき蕎麦の食い方などは、教えないといけない。人情ものがわからなければいけない。私も、歌舞伎や落語、日本的なものを勉強しなければいけない。