やっぱり俺はストーンズファンじゃなかったのね

Steel Wheels (1989)

 学生時代の先輩と後輩に誘われて、ローリンズストーンズの来日公演に出かける。4時30分開場、18時30分開演だ。

 実は、ローリングストーンズにはそれほど期待はしていなかった。S席1万円もするチケットだが、これほど事前にワクワクしないコンサートもめずらしい。日本では、それほど多いわけでもないが、それでもコンサートとなれば、どきどきして出かけたものだ。

 数が少ないというのは、厳選した結果だろうから、当たり前なのかもしれないが、中学生のときに出かけたPPMや、大学生の頃の Neil YoungBob Dylan、社会人になってからの Randy Newman、Bruce SpringsteenStevie Wonder、Prince、David Lindley、U2。どれひとつとして、事前にワクワクしなかったコンサートはない。

 けれども、今回はちがう。やはり、基本的に、俺がストーンズのファンでないということなのだろう。もちろん、ストーンズの果たした役割は認めているし、好きなアルバムも数枚はある。

 それにしても東京ドームの音は悪い。音量をしぼってキレのよい音ならいいのだが、あの音じゃね。ただうるさいだけだ。ミック=ジャガーの声も好きでないし、うまくもない。キース=リチャーズのほうが声が出ていた。ボーカルとしてうまくもないが、悪くはなかった。

 ともかく自分がストーンズファンでないことを再確認した。

 もし東京ドームでなく、どこか小さなハコで、客層もミックやキースが出ていればそれでいいというのではなく、地に足のついたタメのあるロックンロールやブルーズを聞きたかったなぁ。

 大きな人形のあらわれた "Honky Tonk Women" は、まぁまぁだったが、もっとアメリカ合州国の南部から学んだ成果としてのブルーズを聞きたかったなぁ。

 前回出かけたコンサートのU2B.B.King。そのときU2が体現していたものは、アイルランドの精神のようなものだったが、ストーンズが体現していたものは、なにかビッグビジネスだけのような気がして、どうもスッキリしなかった。

 "Satisfaction" は、意味があった。簡単な歌詞だが、あの唄は当時の時代精神を具現化していたのだろう。でも、いまは、ストーンズといっしょに日本人がこの唄を歌っても、俺にはどうもピンとこない。

 ストーンズは歴史的には意味のあることをたくさんしてきたのだろうけれど、楽器編成もふくめて、こうした大きな会場でやること自体は魅力的でない。

 コンサート後も耳鳴りがしているようで、自分にとっては最悪のコンサートだったと書かなければならない。サリフ=ケイタやユッスンドールのコンサートがあると言われたほうがよほど興奮する。この4月にユッスンドールのコンサートがあるから、これは必見だ。なにしろ、ユッスンドールのアルバム「ライオン」(The Lion)に俺は今まいっている。Peter Gabrielとの "Shaking the Tree"などは、もう最高だ。

The Lion (1989)

 シンガポールのディック=リー(Dick Lee)もおかしくてよいのだけどね。