1967年の「俺たちに明日はない」(アーサー・ペン監督)や「卒業」(マイク・ニコルズ監督)など、ベビーブーマーたちがこぞって観たニューシネマ。映画「卒業」は、自分がかけだし英語教師の頃、母語話者に手伝ってもらってシナリオおこしをしたことがある*1また選択授業で扱ったこともある。映画「卒業」の例の「プラスチック」のギャグ。ベビーブーマーにとってはまさに「アメリカの悪と偽善の象徴」であったろう。話の中で若者たちが何かを探し求めていた映画だった。10年後の「クレイマー、クレイマー」も、サンフランシスコの劇場もふくめて何度も観たが、著者によれば「卒業」と同じ観客を相手とする映画だったという。
一般に良心的作品と思われる、サリー・フィールドの"Place in the Heart"(1984)は、黒人の映画評論家によると、「黒人側からはレーガン時代の白人のバックラッシュの一つだとコテンパンに不評を買った」という。これは初めて知った。
カラー映画として歴史的な大型作品といえる「風とともに去りぬ」(1939)も、人種差別映画として、公的な場所では上映されない作品のひとつとなってしまったらしい。ベストワン映画に上げることもできないと。なるほど。これも知らなかったが、おそらく、黒人の描き方がステレオタイプであり、奴隷制の過酷さを描いていないという観点からのことなのだろう。
というのも、大昔にサンフランシスコの映画館で見た"Song of the South"(「南部の唄」)というWalt Disney(ウォルト・ディズニー) のアニメ映画が、「この映画の時代背景である19世紀末のアメリカ南部の黒人生活があまりにも現実とかけ離れているという理由から全米黒人地位向上協会によるクレームがあり、ディズニー社の自主規制により1986年以降公開されることはなくなってしまっている」という話を聞いたことがあるからだ。
著者は、日本の中学校の教科書に、マーチン・ルーサー・キングジュニア(MLK)や公民権運動が載っていないことについても触れられている。
「レインマン」(1988)によって自閉症の子どもからあの映画以降みんなが親切になったという話。
また、「いまを生きる」(1989)や「黄昏」(1981)についても触れている。