ファカレワレワ地熱地帯再訪

 だから今日から本格的なロトルア観光になる。
 ロトルアでは、まず4月に訪れたファカレワレワを再訪することにした。ファカレワレワはガイザー(Geyser)と呼ばれる間欠泉が有名で、ロトルアでは定番中の定番である。間欠泉(ガイザー)とは、噴水のように吹き出る温泉のことで、このファカのものには、ポフツ間欠泉という名称がついている。地熱地帯にある間欠泉では最大のもので、地上30メートルまで吹き上げる。4月に訪問した際にこのガイザーは見ているのだが、私の入った施設からは、このガイザーを遠くにしか見ることができなかった。見ると、向こう側でたくさんの観光客が近場でポフツ間欠泉を見ている。近くで掃除をしていたマオリに、どうやったら向こうにいる観光客のように近場で間欠泉を見ることができるのかと聞いてみると、向こう側に行くには仕切りがあって、こちら側からは行けないという。いったん今いる施設を出て、また入場料を払って向こうの施設から行くしかないと言われた。どうやら少し前までは、こちらの施設と向こうの施設とはつながっていたらしい。「なぜ」という私の質問に対して、そのマオリの女性は、一言、「政治よ(Politics.)」と答えた。つまり、ポフツ間欠泉をめぐって、マオリどうしで争いがあるらしいのだ。4月に訪問した際には、池にいたマオリの子どもたちが観光客に対して、お金を投げたら取ってみせると言っていたように私には聞こえたのだが、この辺の事情はよくわからないけれど、ジュディに話をした際に、マオリ間では争いが耐えないし、貧困問題があると言っていたから、おそらくそうだったのだろう。
 ということで、こちらのメジャーな施設からファカを訪問するのは、今回初めての体験となる。
 間欠泉に至る途中、ニュージーランドを代表する鳥であるキーウィを見せるキーウィハウスがある。キーウィはニュージーランドの国鳥だが、飛べない鳥で、外敵が持ち込まれたために現在絶滅の危機に瀕している。この夜行性のキーウィを初めて私は薄暗い施設の中で見た。
 さて、いよいよガイザー見学である。もうもうたる湯煙の中で間欠泉を見学できたが、吹き上げるガイザーが冷めて冷雨になっているのかと思ったら、本当に小雨が振り出してきていて、雨宿りをしなければならなくなった。
間欠泉の見学をおえて、順路に沿って進んでいくと、泥のプールと呼ばれる泥泉もあって周囲を少し散策できるようになっている。一通り見学してから、マオリの重要な集会場であるマラエの見学をすることにした。ここのマラエはとても立派である。マラエ内では基本的に靴を脱がなければならない。中に入ると、マラエ内部の装飾も見事だ。
 12時15分から、マオリの音楽と踊りのコンサートがこのマラエであるので、それまでにカフェでハンギ料理で昼食を済ませることにする。どういうわけか、ここのカフェではマオリの伝統的料理のハンギ料理を売りにはしていないような雰囲気であったが、ハンギ料理は、蒸したトウモロコシやじゃがいも、それに鶏肉とで構成される極めて素朴な料理であり、日本でいうならば、ふかし芋やふかしたトウモロコシと同じものである。日本で温泉卵を作るように、ロトルアは地熱地帯だから、ロトルアには自然の蒸し器(cooker)がたくさんある。最近は禁止されているようだが、昔から、この地熱を利用した自然な調理道具でマオリは料理をしていたことだろう。
 さて、お昼からマラエでみたコンサートの水準はなかなか高かった。棒を使ったティティトレア。勇壮なハカとポイダンスも素晴らしかったが、男と女のラブソングがとびきり素晴らしかった。私の後に高校生くらいの年齢の日本の男の子たちがいたけれど、マナーが悪く、私語が絶えなかった。2人くらいの大人に注意されて、しばらくは静かにしていたが、彼らの私語はやまなかった。私が感動したパフォーマンスが終わると、彼らのうちの一人が「ようやく終わったか」という一言とともに、彼らは会場を後にした。私はカメラ撮影を遠慮していたのだが、最後のアナウンスで、演奏者たちの写真撮影を勧められたので、舞台前まで進んで写真を撮らせてもらった。私が演奏者たちに手を振ると、舞台の上のマオリの女性が手を振って応えてくれた。
 ファカの内部にマオリ美術・工芸学校(New Zealand Maori Arts and Crafts Institute)があり、ここの見学は初めてだった。作業中のマオリに「写真を撮影してよいか」と許可を得ると、「問題ない」と言われた。紋様のパターンの写真を撮っていると、作業していたマオリの一人が近づいてきて、日本の流鏑馬(やぶさめ)について聞かれた。私は大学でマオリ語を習っているといって、彼と楽しく交流した。