英語、英語というけれど、内容がないと話題についていけない

 このキーウィーの女性は、結構なインテリで、世界のあちこちから来た観光客に何語を話すのか聞いたりしている。
 私は、マオリ語を学んでいることも話し、ニュージーランドでは、イギリス語が公用語になっているけれど、マオリ語は、ようやく公用語になったはず*1というような話をしたら、あんたよく知っているわねというような顔をされて、とても興味を持ってくれた。
 彼女は、マオリ語と日本語は発音が似ているのではないかというので、マオリ語は、アエイオウ、日本語はアイウエオと、順番が違うだけで、母音の発音は全く同じであることを私は紹介した。
 お風呂で取り上げられている今回の話題は、アイルランドゲール語の状況やニュージーランドマオリ語の状況についてであって、私にとっては既習事項ばかりだから、話題として参加するのに全く困らない。
 アイルランドの女性には、私が家族とアイルランドのコークから旅をして、ディングル半島やゴールウェイ(Galway)、コネマラ、ドニゴール、キャバンと自動車旅行をしたことがあり、音楽の聖地、ミルタウンマラベイやドゥリーンの話をして、アイルランドのパブ文化、とりわけ音楽がどれほど素晴らしいものなのか、感動をこめて話した。
 フィンランドソ連の関係やら、明日がフィンランド独立記念日であることや、フィンランドやカナダの極地には、ほとんど夏がなく、一年中冬のようなものであること。白夜もあることなどが話題になっている。
 私は、巨大英語圏の話と、それとは全く別にハワイ諸島、日本、ニュージーランドと、太平洋文化圏*2のようなものがあるのではないかという、いつもの私の印象を紹介した。
 日本とニュージーランドは、共通性が多く、たとえば、海に囲まれていること、地震国であること、マオリとは特に海産物を好んで食べること。ただし、大きく違うことは、ニュージーランドの人口400万は、富士山のある静岡県の人口とほぼ同じであること。日本の人口が1億2000万人*3であることなどを紹介した。
 「日本は地理的に孤立しているのと同様に言語的にも孤立している*4」というのも私の持論だが、そうした中にあって、外国語教育や外国語学習はもっと戦略・戦術的に考える必要があるというのも私が日頃から考えていることのひとつだ。
 こうした内容は日頃から整理して、何度も話しているので、問題なく話ができる。日本人のいわゆる「英会話」が抱える問題のひとつは、内容が空疎であることだ。
 不自由な外国語を話すためには、言うべき内容を常に準備し、いわば「武装」している必要がある。
 大体英語教師なら、イングランドを理解するためにアイルランド問題を理解すること、アメリカ合州国なら、ネイティブアメリカン問題やアフリカ系アメリカ人の問題を理解すること、ニュージーランドなら、マオリの問題を理解すること、こうしたことを理解することは必要不可欠ではないかと思う。
 でないと、彼らと話ができないと思うのだ*5
 英語教師になりたての頃、どこで外国人と出会えるかなと思った私は、結局、実践はしなかったけれど、はとバスを思いついたことがある。
 もし私がキーウィーで、外国のことに興味があったとしたら、このポリネシアンスパに随分と来るだろうと思った。
 日本の英語教師は、日本の言語的孤立環境を、いろんな意味で打破しないといけない。そのためには、なんといっても戦略・戦術が必要だ。

*1:ニュージーランドでのマオリ語の公用語化は遅く、マオリ語の公用語化は1987年に果たされた。

*2:ここで言う「太平洋文化圏」とは、正確にいえば、ポリネシア文化圏のことで、ハワイ、ニュージーランドイースター島の三角地帯を指す。

*3:ニュージーランドが、4 millionに対して、日本のそれは120 millionほどになる。

*4:言語的に孤立しているということ自体は必ずしも悪いこととは全く考えていない。英語、英語とさわいでいる時代にあっては、むしろ政治的に独立するために、必要な条件かもしれないとすら私は考えている。

*5:だから、日本の全ての英語教師には研修として巨大英語圏をあちこちと行かせる政策が必要だと思う。各地を研修させて、交流して、英語圏研究をすすめるべきである。