ロトルアは観光都市で国際的な町

 レイ、マイケル、そしてデイブと、一人ひとり車で帰っていく。
 静まりかえった釣り宿の外にある水道場で、私は一人で、釣り上げた鱒のハラワタを取り、頭を切り落として*1、ビニール袋と新聞紙に包んで、昨日と今日の釣果である二尾の獲物を車に積み込んだ。
 宿のポリーとマリアンに世話になったお礼を言って、私も釣り宿を後にした。
 釣果がなければ、キャンプでもしながらハミルトンに帰ろうと思っていた私は、クーラーボックスもないから、早めに帰らないといけなくなってしまったが、すぐにハミルトンに帰る気はしない。
 以前4月に泊まったことのあるロトルア市内中心地にあるバックパッカーのモーテルに泊まって、ロトルアに少し残ろうと私は考えていた。
 フェントン通りには、いいモーテルがたくさんあるのだが、今日は寝るだけだから、多少部屋の美観に問題があっても構わない。
 4月に世話になったインド人経営者に久しぶりに会って挨拶をした。
 このバックパッカーモーテルで値段を聞いてみたら、55ドルもするという。これは結構な値段だ。これならフェントン通りで泊まった方がいいかもしれない。けれども、シングルであろうとカップルであろうと、同じ55ドルだから、シングルで旅をする私のような奴はよほど損だ。二人の子ども連れでも、二つのベッドルームで四人で泊まって90ドルだから、シングルの旅は、よほど損にできている。
 ともかくここに早々と宿を決めて、ポリネシアンスパのお風呂に出かけることにした。
 シティセンターの端っこにあるこのバックパッカーズモーテルから、ポリネシアンスパへは歩いてもいけるが、少し距離がある。今回は車で出かけることにした。
 ポリネシアンスパは、ロトルアに来たことのある日本人旅行客には御馴染みの定番であろう。
 ポリネシアンスパには、岩風呂のような30ドルコースと15ドルのコースがあり、15ドルのコースは、温泉プールのような奴と3つの風呂がある。
 私は前に岩風呂には入ったことがあるので、今回は15ドルの奴にした*2
 4月に来た時には、30ドルの岩風呂の方に入り、その際には日本人旅行客にも随分と会ったのだが、今回は15ドルコースのせいか、中国人団体観光客ばかりが目立っていた。
 水着は着用しなければならないが、ロトルア湖畔を飛翔するかもめを見ながらの温泉は最高だ。ここでは、写真を取っている女性客もいるから、よほど観光地なのだろう*3
 水着着用で、ロトルア湖を見下ろす風呂に入ったら、キーウィーの女性に、どこから来たのかと聞かれた。
 「日本からですけど」と答えると、彼女から「ここは国際的で、あの人はフィンランドから、この人はベルギーから、ドイツから、カナダから、アイルランド、中国、台湾からと世界のあちこちから来ている」と紹介された。
 「それじゃ、ポリネシアンスパじゃなくて、インターナショナルスパと変えた方がいいかも」と私も調子にのって提案すると、彼女も、「それじゃ、国際会議を始めましょうか」と陽気だ。
 「議題は何ですか」と、私も調子を合わせた。

*1:頭を切り落とす際に、胸びれを落とさないようにすることが大事だと私はアレックスに聞いていた。

*2:ジュディはこの15ドルの奴でも、「なんで自分の家にスパがあるのに、15ドルも払って物好きにスパに入るのか」と、まるで信じられないといった顔つきで私に述べたことがある。

*3:ロトルアは歴史的にみても観光地で、ヨーロッパからの湯治客も少なくなかった。