安くて快適な釣り宿

 パラダイスバレー(Paradise Valley)にある釣り宿には早めに着くようにハミルトンを出発した。
 パラダイスバレーはロトルアの中心地からほんの少し離れているだけだが、羊がたくさん放牧されていて、まさに田舎の雰囲気だ。
 釣り宿では、フライフィッシングの第一回目の講師を務めたポリー(仮名)に出迎えられ、「あなたのことは覚えているわよ」と言われた。
 フライフィッシングのクラスの中でアジア系は私だけだし、英語もできそうもない感じだから覚えられていて当然だろう。
 ポリーは、1954年に大学生だったらしいが、どうみてもそうした年齢には見えない。元気で快活だ*1
 ポリーは、自分が大学生の時に知り合いになった中国人との交流について話してくれて、彼女のサインの入った古い本を私に見せてくれた。
 日本人の釣り師もこの宿によく来るようだ。彼らは三角形ツアーとは無縁の、いわゆる長期滞在者だ。
 それで、彼女いわく、日本人は物静かでとても紳士的だから、好印象を持っているという。
 オークランド・ロトルア・ワイトモ洞窟の悲しき三角ツアーを脱した、こうした日本人がいるということを知るだけで、日本人もまんざら捨てたもんじゃないと、私はとても嬉しくなる。そうした日本人から贈り物としていただいた七福神の置物もポリーは見せてくれた。
 ここの釣り宿には、広いリビングと台所があり、冷蔵庫やオーブン、食器も食器棚もそろっている。一段低いところに、二部屋あって、ベッドがそれぞれ4つずつあり、釣り宿だから眠るだけという感じだけれど、ニュージーランドらしく「必要にして充分」になっている。
 通りをはさんですぐのところに別棟があり、シャワーとトイレが2つずつ。それにウェイダーなどを乾かすドライルームも完備されている。
 ポリーとマリアン(仮名)という女性二人で運営していることも手伝っているだろうけれど、何と言ってもこの宿はきれいだ。これで、素泊まりで10ドルというのだから、長期間滞在するにはうってつけの宿だ。
 他にも宿泊施設があるのか、台所を使いに、イギリスから来た若い学生が二人台所に来ていた。
 川や湖に入る際に着るウェーダーは、アレックスの奴が私には小さめだったので、ウェーダーを借りに、ロトルアの町中のオキーフという店に行ってみろとポリーが言う。実際は二日間借りることになるのだけれど、一日だけ借りると言えばいいとアドバイスまでしてくれた。
 私の今のニュージーランド生活は、車があることもそうだが、ロトルアは、ロトルア湖を自転車で一周したり、車でも何度か来ているから、土地勘もわかるので問題はない。
 以前なら、シティセンターのオキーフという店と言われても、途方に暮れていたことだろう。

*1:一般的に言って、年配のキーウィーの元気さは、日本人のそれとは比べものにならないくらい元気だ。例外はもちろんあるけれど、アレックスやジュディのように70歳代で、車は運転するし、海外旅行はするし、畑仕事はするし、ゴルフも釣りもするのは普通のことだ。