湖でのフライフィッシングをしに、みんなで出かける

 ウェーダーとロッドを積み込んで、二台の車でレイの小屋を後にする際に、南アフリカ出身のチャールズ(仮名)が来た。
 彼もコーケージアン(白人)である。チャールズも車をレイの小屋前に乗り捨てて、レイの車に同乗することになった。
 実は私はこの4月に自転車でロトルア湖を一周した経験がある。
 40キロくらいの自動車道路だったから、サイクリングとしては全く面白いものではなかったけれど、ロトルアで今回釣り場をいろいろと案内される際には、そのときの土地勘が大いに役立っている。
 今回は、ハムラナスプリング(Hamurana Springs)近くから、ロトルア湖に入るようだ。
 ハムラナスプリングは、ロトルアの市内中心地からすると、反対側の岸にあたる。
 ハムラナスプリングに、車をとめて、みんなでウェーダーに着替える。
 まず、レイはじっくりと湖の様子を眺めている。
 岸辺に魚がいることを講師のレイが発見したようで、早速レイはキャスティング開始。
 レイのキャスティングはまるで鞭のように正確に、魚の鼻っ面にフライが流れるようにキャスティングする。
 生徒一同、それを眺める。
 なんでもそうだけれど、一流になると違う。フォームがとても美しい。
 惚れ惚れするような見事なキャスティングだ。
 講師のレイは見事なキャスティングを何度も繰り返すが、魚の方が興味を持ってくれないようで、せっかくの美しいキャスティングも残念ながら、中止。みんなでロトルア湖に入り、全員で、キャスティングの実践に入ることになった。
 ロトルア湖に生徒一同じゃぶじゃぶと入る際に、レイに「タイタニックじゃないんだから、もっと静かに湖に入らないと魚が逃げてしまう」とみな注意される。
 生徒一同は講師の指示に従い、静々と湖に入っていく。
 こうして昼間のロトルア湖での釣りが開始した。
 いわばキャスティングの練習のようなものだが、実戦であることに間違いはない。
 このウェーダーを着ての、湖の中での釣りはなんとも楽しい。
 私の場合、キャスティングがまだ下手くそなので、時々、ラインが絡んでしまう。
 レイは私のキャスティングがソフトで弱い。もっとハードにキャスティングしろという。
 見ると、レイのキャスティングは、原則どおり、引きは、時計で言うと1時のあたりでストップし、前に強く押し出すようにキャスティングしている。
 大体1回のキャスティングだけでもよく前にラインが飛んで、レイの場合、大体3回目のキャスティングでリリースが完了。フローティングラインが出きってしまう。
 1時間くらいして、釣果もないので、ハムラナは切り上げることにした。
 こうして、あちこちの釣り場を車で見て行きながら、私たちは、あちこちのポイントでキャスティングを繰り返した。
 移動中の車内での話題は、釣りをしてよいシーズン、釣りをしてよい場所、ルアーやフライフィッシングなど釣りの種類、どんな釣りが許されているか、フライは何がいいかなどだ。
 レイの情報は、フライロッダーにとっては、たまらない情報だろうが、これらの情報収集は、釣りのど素人で、イギリス語が母語でない私にとっては、ちょいと辛いところがある。