私のホームステイファミリーであるアレックスとジュディの長女マーガレット、その連れ合いのジェフは、高校教師だ。
そのジェフに借りた「ニュージーランド物語」*1(ジュディス=バセット、キース=シンクレア、マーシャ=ステンソン著)は、子どもを対象に書かれた本だが、とても面白い本だ。
この第一章の題名が、”A Land of Birds”となっていて、人間が住みつく前の、当時のニュージーランドの様子が描かれている。
原文を忠実に訳すかたちではなく、省くところは省き、あくまでも概要ということで、最初の箇所だけ私なりに以下訳してみた。
2億年以上も前の話になるが、ニュージーランドは、ゴンドワナ大陸(Gondwanaland)と呼ばれる南の大陸の一部だった。
このゴンドワナ大陸が、長い年月をかけて、いわゆる大陸移動によって、南アメリカやアフリカ、インド、オーストラリア、南極、そしてニュージーランドへと分かれていった。
その結果、ニュージーランドは、かなり孤立した場所に位置づくことになった。
ニュージーランドは、オーストラリアからは、1600キロ。トンガからは、1700キロ。南極からは、2300キロも離れている位置に、落ち着いたのである。
この移動は、結果的に、その後のニュージーランドに大きな影響をもたらすことになる。
一つは、ゴンドワナ大陸時代の古代生物が、敵から守られ、保護されたことがその一つだ。
ツアタラ(tuatara((トカゲのような爬虫類。ツアタラは身体は小さいが、2億2000年前までさかのぼることができ、恐竜時代の生き残りと考えられている。ツアタラは、ハミルトン動物園や、ロトルアのレインボースプリングで見ることができる。))や、ニュージーランドに元からいた土着のカエルなどは、この大陸移動のおかげで、生き延びたと言われている。
原始的な哺乳類であるカンガルーのような有袋類や哺乳類が登場する以前に、ニュージーランドは、ゴンドワナ大陸から別れて移動したからだ。
コウモリも非常に古い時代の生物で、ニュージーランド唯一の陸地に住む哺乳類だったが、おそらく後年、飛んできた可能性も高い。
カウリマツ((カウリの木は、北島にしか見られず、材木として優れているため、かなりのカウリはすでに伐採されてしまった。現在、カウリが多く見られる場所としては、北島のワイポウア(Waipoua)やトロウンソン(Trounson)などのカウリフォレストが知られている。))Kauri)とか、カヒカテア*2(kahikatea)、リム*3(rimu)のような、ゴンドワナ大陸の時代の直系の子孫も含めて、ニュージーランドの木々は、とても古い。
これらに比べると、北半球の動植物は、5万年前の氷河期に絶滅したと言われているので、比較的若い時代のものにあたる。
実際、ニュージーランドのカウリマツの木のいくつかは、2000年の樹齢をこえていると信じられているものがあり、地球上で最も古い樹木の一つになっている。
ニュージーランドは、他の地域と隔絶しているため、ニュージーランド国内で、長い年月をかけて植物が独特な発展を遂げてきているのである。
ニュージーランドには活発な昆虫もいたけれども、当時のニュージーランドは基本的に鳥によって支配されていた。
野原や森の緑は、カンガルーやバイソン、あるいはバッファローによってではなくて、ニュージーランドでは、鳥によってついばまれ、食されてきたのである。
飛べない最大の鳥、巨大なモア(moa)は、3メートルもの高さがあったし、もっと小さなキーウィ(kiwi)のような飛べない鳥もいた。これらの飛べない鳥たちは、ゴンドワナ大陸の時代の飛べない鳥たちの末裔だと考えられている。哺乳類や敵がいなかったので、ニュージーランドでは、こうした飛べない鳥たちが生存しえたし、繁栄しえたのだ。
初期のマオリの伝説によれば、ポリネシアから来た最初の探検者クペ(Kupe)がニュージーランドに着いたときに、たったの二つの「生き物」だけに、出迎えられたという。
それが、コーカコ(kōkako)とピワカワカ(piwakawaka)である。つまり、カラスと、クジャクバトだ。
ニュージーランドに最初に到着した人間が発見したことは、ニュージーランドが鳥のたくさん住む地であるということだったのだ。
*1:Judith Bassett, Keith Sinclair, and Marcia Stenson “The Story of New Zealand” Reed Methuen 1987 以下のリンクは、その新版。The Story of New Zealand。
*2:カヒカテアは、英語では、white pineと呼ばれる。
*3:リムは、英語では、red pineと呼ばれる。