「多民族国家として、ニュージーランドという国をどうとらえるべきか」と私が質問した際に、ニュージーランドは「二つの民族の国」(A Nation of Two Nations)であると彼は答えた。「二重文化の統治」(“Bi-cultural Governance”)であると。
A Nation of Two Nationsの最初のネイションは、「国」という意味で、後者のネイションは、「民族」という意味であろう。つまり、A Nation of Two Nationsは、「二つの民族で構成される国」という意味だ。
「けれどもモリオリ(Moriori)とか、少数民族の問題もありますよね」と私がニュージーランドの少数民族の存在をさして言うと、彼はさらに他の民族としてタウイウィ(Tauiwi)の名前を出してくれた。
つまり、マオリから見ると、ニュージーランドの民族構成は、こうなる。
- Māori(マオリ)
- Pakeha(パケハ)
- Moriori(モリオリ)
- Tauiwi(タウイウィ)
これがいわゆる「人種のるつぼ」*1ではなく、モザイク状態に今日のニュージーランドを構成しているわけだ。
「ある意味では、ニュージーランドは、サラダボウルとも言えますね」と私が言うと、すぐに彼が肯定したので、「例えば、マオリがトマトで、パケハがレタスで、他の少数民族がキュウリやパセリとなるとすれば、このサラダボウルのドレッシングは何にあたるのですか」と私が尋ねると、彼はすぐに「ワイタンギ条約(The Treaty of Waitangi)です」と答えた。
続けて彼は「三つのP(Three Ps)ってご存知ですか」と私に質問をするので、「いいえ、知りません」と私が答えると、三つのPとは、今日のニュージーランドを支える基本精神のことで、次の三つを意味するという。
- Partnership(相互補助と援助)
- Participation(積極的参加)
- Protection(互いの自主・自立の尊重と保護)
彼は、今やっている私たちの作業がまさにこの「三つのP」だという。つまり、互いの立場を尊重しながら、積極的に参加し、相互援助しているのだと。
常々私はニュージーランドの公的サービスの高さに感心しているのだけれど、こうした基本精神を末端の職員までがさらりと言ってのけるところが、ニュージーランドのすごさだろう。