キーウィの暮らしと自動車を運転すること

 3時15分に学校が終わると、みな急いで家に帰ると彼女はいう。
 もちろん、それがキーウィの常識だ。
 この家は、シティセンターから多少遠いから、車のない彼女には、移動が大変だろう。というか、学校と家との往復で、あちこちに自分で行ってみたいという気が起こらないだろう*1
 大体キーウィは、15歳くらいから運転を始め、運転歴の長い人や保護者同伴だったり、夜間走行が禁じられているなどの条件があるが、三年くらいで自分ひとりだけで運転ができるようになる。彼女の通っている高校では、もちろん自動車通学の生徒もいるはずである。
 こんな具合だから、ニュージーランドでは、「免許を持っていない人間は人間ではない」という持論を私はもつに至ったのだが、キーウィにこれを言うと彼らは笑うだけだ。私のように「人間じゃない」と言えば露骨な差別になるから、キーウィは同意しないだけの話で、実態は的確にとらえていると自分では思っている。
 彼女が友人と、一度土曜日にバスでシティセンターまで行こうとしたら、土曜日は全てのバスが休みだということを初めて知ったという。
 土日にバスがほとんど運行しないことも、ニュージーランドの常識だ。
 ホストファミリーが教えてくれたらよかったのにと言うが、こうした「察しゲーム」は日本人のお家芸で、こちらのゲームのやり方ではない。ゲームはゲームでも、やり方もルールも違うのだ。郷に入っては郷に従えで、なるべくこちらのルールを早目に覚えて身につけた方が徳だ。
 大体、彼らは車に乗っているから、バスのことなんて眼中にないから、案外知らないことも少なくない。彼女がホストファミリーに土曜日はバスが運行しないことを伝えても、ああそうなのという反応だったという。
 私は、キーウィは悪気がないから、そうしたことは気にしないようにと、彼女に助言をした。
 ニュージーランドに来て一ヶ月ほどになるが、英語の点や、友達が十分にできない点で、進歩がないような気がして焦っているという。
 これについても、私は、焦らないように彼女に言った。日本人が頑張り屋なことは私自身よく知っているけれど、真面目過ぎるのも気疲れすることがある。
 それに慣れるのは、大体三ヶ月が目処だからだ。

*1:車の代わりに自転車という手があるが、自転車は車と同じ意識で乗るのが常識であるから、ヘルメット着用など装備を怠ることなく、軽い気持ちでは乗らない方がいい。