シンプルなチキンライスに感動する

 あちこち回っていると、Hainanese Boneless Chicken Riceと書いてある店の前に、長蛇の列ができている。
 見ると、湯気のたっている白米に白いスライスしたチキンをざっとのせて、くるんでいる。お持ち帰りの人が多いようで、二つも三つも買って持ち帰っている。
 単なる白米とチキンに何故そんなに人気があるのだろうか。
 おそらく単なる白米とチキンではないのだろう。それから、複雑でディープな中華料理が多い中で、たまには、シンプルなモノを求める気分もあるのかもしれない。いずれにせよ、食べ物をよく知っている中国系シンガポール人の長い列ができているのだから、これは期待できそうだ。私も早速その末尾に並んでみる。
 大きさによってここも、2ドルと3ドルとあるようだ。
 私の場合、味見だから2ドルで十分。ようやく私の順番が来て、2ドルのチキンライスをつくってもらった。これには、鶏のスープもついている。
 見ると、白米の上に薄いきゅうりがのっていて、さらに白い鶏のスライスがたくさんのっている。
 一口食べてみると、さっぱりとしているが、香りがいい。
 ベトナム風なのか中国風なのか、香草も入っているようで、ときたま、あっさりとしかもしっかりと、その香草が自己主張している。
 カレーライスの福神漬けのような役割のようなものなのだろう、少しパイナップルのような味わいの野菜のつけあわせがついている。
 このチキンライスは感動的にうまい。
 シンガポールの貨幣価値では、このチキンライスの2ドルを、基準にすることに私は決めた。この味で、この値段。それ以上の値段で、質も量も悪ければ、金を払いたくないという金銭感覚だ。
 昨夜のチョンプチョンプに次いで、私はティオン・バルに感動を覚えて、その場を立ち去った。
 ティオン・バル駅に着くと、駅の入口にマクドナルドがある。
 5分も歩けば、ディープなアジアが味わえるというのに、こんなところでマクドナルドを食う奴の気が知れない。
 ティオン・バルでは、クックトフードセンターで、是非ともこのチキンライスを食べて欲しい。

  • Tiong Bahru Cooked Food Centre