林信吾氏と斎藤貴男氏による「ニッポン不公正社会 (平凡社新書)」を読んだ。対談なので、さっと読めてしまう内容だ。
両氏のものをいままで全く読んだことはないのだが、斎藤氏の次の発言が最も印象に残った。
「日本の二世、三世というのは、単に政治家を継いだというレベルじゃなくて、最近はもっと根が深いと思うようになった。
もと大阪府議の柳河瀬精という人が、『告発 戦後の特高官僚』(日本機関紙出版センター、二〇〇五)という本をまとめている。それ読むと戦時中の特高警察官僚が戦後どうしたかを徹底的に追及している。みんな公職追放されたはずなんだけど、いつのまにか復権しちゃって、ほとんどがその後も要職に就いていくわけ。厚生省に入ったり、警察庁に入ったり、教育委員になったり、そういう人がいっぱいいて、その後国会議員になる人もたくさん出るわけよ。
いま二世、三世議員になってる人の中には、かなりこの息子たちがいるわけ。一番有名なのは前外務大臣の町村信孝だよね。内務官僚から代議士になった町村金五のせがれです。あと、元外務大臣の高村正彦とか、古屋圭司とか保岡興治とか、もうごろごろいるわけ。単なる代議士二世というんじゃなくて、内務官僚あがりの息子の、この国は俺のものというやつらばっかりなんだよ。
戦後民主主義とか一億総中流といわれてきて、もうちょっと公平な社会だとみんな信じてたわけだけど、決してそんなことはない。かなりのもんだと思う」
林氏は10年ほど、斎藤氏は1年ほど、イギリスに滞在されたとのことだが、その斎藤氏の「バーミンガムにきれいなパブがあって、家族と一緒にそこへ行ったら、日本人にはビール出せないって言われた。ロンドンとか大学のまわりでは全然そんなことなかったから、かなりショックでした。今でもそんなこと言っているんだなって」という体験が興味深かった。
別の箇所で林氏が「イギリスの階級社会というのも、なぜあれが崩れないかといったら、やっぱり教育の機会均等が存在しないところにあった」と発言されているけれど、今の段階では、若い人は低収入でも親のスネをかじってパラサイトすることが可能だけれど、親の定年や死亡を迎えれば、それもできなくなる。斎藤氏が「今の新自由主義というのは、社会ダーウィニズムとはっきりと同義だと思う」と喝破されていたけれど、今後ますます日本は教育の機会均等が奪われ、「不公正社会」になっていくに違いない。