SolasのJohnny’s Gone For A Soldier

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Solas

 この「バラッドの世界」によれば、1691年のリムリック条約によって、プロテスタントのオレンジ公ウィリアムの率いる軍隊と戦って、全面降伏し、追放というかたちで土地を没収され、フランスに移住せざるをえなかった1万4千人ものアイルランドカトリック教徒たちは、のちにワイルド・ギースというなで勇名を馳せる傭兵軍団となった。
 このワイルド・ギースとなるべく大陸へと渡っていった恋人を偲ぶ歌が、シューリ・ルゥ(Siuil A Run)という歌で、クラナド(Clanad)が1976年の三枚目Dulamanで歌っている。
 この歌は、コーラスがゲーリックで、ヴァースの部分が英語と、「珍しい構造をもった歌」だ。
 さらに茂木健氏の説明から引けば、「一七七六年代の独立宣言の前後約一〇年間に、独立戦争の節目となった戦闘や指揮官の行動を歌った歌が数多く作られ後世に伝えられたが、それら一群の歌の中で、ひときわ異彩を放っていものに<<ジョニーは兵隊になって行ってしまった>>という歌がある。歌われているのは、兵士になった夫、あるいは恋人の身の上を気づかう女性の心情なのだが、この歌こそが、アメリカ風にすこし姿を変えた<<シューリ・ルゥ>>だった」。
 そして、1960年代にPeter, Paul and Maryが、「虹、去りて」(Gone the Rainbow)という歌を二枚目のアルバムMovingの中で、この歌を歌っている。
 「内容は<<シューリ・ルゥ>>と<<ジョニーは兵隊に>>を完全に合体させたもので、ヴァースはほとんど<<シューリ・ルゥ>>のままだった」。
 ということで、PPMの「虹、去りて」は、海を渡ったバラッドだったのである。
 私が初めて聞いたのは、高校生のときのPPM(Peter Paul & Mary)のGone the Rainbowだったのだが、このJohnny’s Gone For A Soldierは、Solasの一枚目でも聞くことができる。アメリカのアイリッシュバンドであるソーラスによるヴァージョンで、この歌が聞けることに感動を覚えたのは10年近くも前のことだ。