長い教師歴の中で初めて1年生から花束と色紙をもらった

 ようやく今年一年間の教育活動が終わろうとしているのだが、一年間の授業が終わるときに私がよくいうつまらない冗談がある。
 それは、「もうすぐ一年間の授業が終わりますが、みなさんは授業を受けた感謝の意味を込めて花束贈呈を計画していると思いますが、それにはおよびません。みなさんの気持ちだけを受け取って、実際の花束は辞退させていただきます」というものだ。これはまさにつまらない白ける冗談で、たとえば初対面なら、なんだこいつと思われてしまう冗談だろう。一年間の長い付き合いを経ていないとなかなか言えないものであるが、はっきり言って、一年間の付き合いがあったとしても言わない方がいい物言いかもしれない。
 それで、このあと恒例のアンケート活動にうつる。一年間の授業を受けてみて、良かった点と悪かった点を書く評価アンケートである。君たちとはこの一年で終わるけれど、来年度わたしの授業を受ける君たちの後輩のために書いてくれといつも言っている。アンケートといっても何も書いていない白い紙だから、好きなことを書かせている。名前を書かなくてもいいと指示しているが、大抵の生徒は名前を書いている。
 ところで花束の冗談だが、3年生なら卒業式があるから、花束贈呈は3年生ならありうる。
 けれども、1年生の担任の場合は、ほぼ完璧に花束なんかもらうことはありえない。
 ところが、ここ数年わたしは1年生の担任をやっていて、今年度も1年生の担任だったのだが、今年は、1年間終了したという感謝の意味を込めて、生徒一人ひとりの気持ちを書いた色紙と花束を生徒一同からもらったのである。
 これまでと同様、今年の生徒たちにも本音で私は付き合ったけれど、今年のクラスは本当にいい生徒たちに恵まれた。
 長い教師生活の中で、これほど教師冥利につきる嬉しいできごとはない。