井筒和幸監督の「パッチギ! Love&Peaceラブ&ピース」は、今表現すべき内容をもった国際的な映画だ

パッチギ!Love&Peaceサントラ

 前作「パッチギ」の続編ともいえる今回の[asin:B000MV9FMG:title]の作品のテーマとしては、難病にあっても、さらには戦争のような極限状況においても、そして差別的状況に置かれても、とにかく生きろというメッセージが座っている。そして何といっても家族愛だ。
 日本ではともすれば、あの侵略戦争を無批判的に美化する政治的風潮が強まる今日、甚大な被害を与えたアジアの人びとを眼の前にして、そうした戦争容認発言を発することができるのか、以前から私は根本的な疑問を思っているが、まさにそうした視点がきちんと描かれている映画で、拍手喝采したくなる気持ちにさせられた。
 井筒監督の人柄がまさにあらわれているとも言える芸風は、正直いえば、私には合わない。もう少し具体的にいえば、乱闘場面が必ず登場することであるが、おそらく人間のもつ葛藤するエネルギーを表現したいということなのだろう。私にとっては生理的に受けつけないのだが、それでも、井筒監督の政治的主張には文句なしに拍手を送りたい。
 アジア人にとって先の戦争がどういう意味をもつものなのか。劇中劇ともいうべき映画の中の映画である「太平洋のサムライ」のような、ある種のヒロイズムが主張できるのか、まさにそれが主人公キョンジャの初日舞台挨拶にあらわれていた。在日朝鮮人の視点から見れば、それはどう映るのかという視点である。
 今回、ほぼ同時期に韓国でも、この映画が上映されると聞いているが、主人公キョンジャと売れっ子俳優・野村健作との関係、そして三浦プロデューサーとの関係は、日本と韓国とでは、見る視点が違ってくるだろう。そうした意味でも、これは国際的な映画といえる。internationalとは、nationとnationの間を行くという意味だからだ。そしてこの場合のnationは、当然「国家」という意味としてではなく「民族」という意味として解釈すべきだ。
 今回の作品も、パッチギ! オリジナル・サウンドトラックフラガールスタンダード・エディション [DVD]などと同様に、プロデューサー・李鳳宇氏の力も大きいのだろう。
 映画のクォリティがどうのこうのというよりも、今日の日本の政治・意識状況に直裁的に切り込むアクチュアリティをもつという点で、特筆すべき、稀有な作品である。
 演技としては、チャンス役の子役・今井悠貴くんの演技が光っていた。
 若い人たちに是非観てもらいたい映画のひとつだ。