「小沢の二転三転」をどう考えるか

 日米関係の圧力について触れながら、小沢氏の慰留問題に関して書き終えたところで、以下の森田実氏のインタビューを見つけた。
 私の書いたことと角度は違うけれど、納得できるところが多いので引用したい。
http://www.ohmynews.co.jp/news/20071106/17037

「小沢の二転三転」を、政治評論家・森田実氏が斬る
福田・森の策略にはまった民主党の行く末は


軸丸 靖子(2007-11-06 21:55)


 安倍首相の突然の辞任に日本中がひっくり返ってから1カ月半。今度はいよいよ政権奪取かと思われた民主党小沢一郎代表が辞意を表明し、なんと、さらにそれを撤回し、政界は再び迷走を極めている。


 小沢抜きで選挙を戦えない民主党は幹部を中心に必死の慰留をしたが、中堅・若手議員らからは「民主党はまだ力量不足」などとした小沢氏の発言に対する不満・不信感も噴出した。一方、混迷の発端となった党首会談を成功させた福田首相は、飄々(ひょうひょう)と臨時国会のまとめ、そして衆院解散総選挙に取りかかっているという。


 参院選の大勝から辞表提出まで、自民・民主の二大政党に、そして小沢一郎氏に何があったのか。政治評論家・森田実氏に聞いた(敬称略、インタビューは6日午前、聞き手は元木昌彦オーマイニュース編集長)。


 以下は、インタビュー前半の森田氏の発言概略です。


この混迷で民主党の信用はガタッと失われたと語る森田氏=6日午前、東京都内で(撮影:軸丸靖子)参院選後の小沢氏の変化──米国の圧力


 小沢は参院選が終わってから大きく変わった、と感じるところがあった。要素は2つ。


 1つは、あれだけ『政治は国民生活だ』と言っていたのに、インド洋沖給油活動をはじめとする安全保障問題にシフトし始めていたこと。


 もう1つは、米国の対日政策が日本尊重からアジア重視へと移行していること。その中で、小沢の言動に、『国連が決議すれば何でもやります』という、1992年以来の国連中心主義が現れ始めていたんですね。


 国連中心主義というのは、小沢が湾岸戦争のときに出した論理。批判を受けて封印していたんだが、小沢は時期が来たらやろうと思っていたのだと思う。また、来年の大統領選で政権をとるであろう米民主党は、イラクからは撤退するが、アフガンからは撤退しない方向だから、その流れもにらんでの動きかなと思っていた。


 ところが、ある時期から別の情報が流れ始めた。


 つまり、米国は日本がインド洋での給油活動をやめることにものすごく怒っている。日本の民主党にも猛烈な圧力がかかってきて、これは党として給油反対を貫けそうもない。小沢も動揺し始めている、というものです。


 そこで出てきたのが自民党との大連立構想です。小沢さんの国連中心主義を自民党も尊重する。ただし、これは大きな政策変更だから大連立でやろう、その上で給油活動を再開しよう、という話になります。


 この大きな枠組みの話がついたのではないかという情報が複数入ってきたところで、福田―小沢の党首会談が実現した。小沢が福田に協力することで新しい体制を作るという、もう拒否できない、いろんな圧力があるのだろうという情報が流れていた。


背信行為の大連立、小沢氏の政治生命は


 党首会談の1度目(10月30日)はジャブの応酬みたいなもの。2度目(11月2日)で福田が大連立を提案し、小沢が持論を提案する。小沢のいまの指導力からすれば民主党はまとめられる。そうしておいて、結論は給油再開。大連立になったから民主党も方向転換して認めるのではないかと、そういうシナリオです。


 ですが、これは大いなる背信行為なんですよ。


 小沢はこの20年間、一貫して政権交代可能な二大政党制を作るといって行動してきた。それで小選挙区を導入して、宮沢政権が倒れ、細川政権が倒れ、羽田政権が倒れ、村山の自社さ政権が起こって、小沢自身も一度はあきらめて自自公連立に入ったが、今度は民主党に近づいて自由党と合併させ、民主党の主導権を握った。参院選過半数を取り、いよいよ彼の政治人生の総決算、政権を奪取することになってきたなあと思っていた。


 しかし、今ここに来て自民党民主党との大連立を模索したという。過去(自自連立)と同じ事を繰り返そうとしているが、連立は政権交代ではない。政権交代を事実上放棄して大連立に動くというのは、背信行為、選挙公約違反で、国民に対する裏切り行為です。それで私も先月(10月)来、小沢はもうダメだと、批判を強めてきた。


政界は総選挙に向けて動き出すと語る森田氏(撮影:軸丸靖子) ただ、この大きなシナリオの中で崩れた部分が1つある。


 それは、小沢が党首会談の内容を民主党役員会に持って帰れば、役員会は小沢に一任するだろう、という前提です。昔の自由党であれば周囲はみな思考を停止して小沢についていっただろう。ところが民主党はそうではなかった。それで、小沢は怒って部屋を飛び出して、辞表を提出した。


 小沢は慰留の条件として、今後の民主党の運営をすべて小沢に委ねる、それが保障されるなら受けても良い、と言っているという。かたや民主党は、小沢の条件を受け入れなければ、小沢が民主党を分裂させるという異常な恐怖心を抱いている。小沢が新党を作り自公に入っていって連立政権を作る、それで民主党は終わりじゃないかというこの分裂恐怖症が、『残ってください』『出て行ってもらっちゃ困ります』という政界としては異常な状況を作り出している。


 その空気をすべて分かっている自民党は、総選挙態勢に入れ、と号令した。一気に政局緊迫に動き始めているのがいまの状況です。


 民主党は絶体絶命のピンチに陥れられた。自民党にすれば、民主党には小沢が残っても勝てる、小沢がやめて分裂して出ればなお勝てる、小沢が出ずに第三者が党首として出てきても、これだけ信用を失った民主党になら勝てる、という状況です。


民主党が進むべき道は


 その中で、民主党ができるのは1つしかない。党首選挙をやること。小沢さんを慰留してもう一度やったとしても、もう選挙で勝ったときの小沢さんではない。すでに、屈服して福田さんに負けちゃった小沢さん、国民に背信し、選挙公約も踏みにじった小沢さんでしかない。


 すでに、民主党に対する国民の信用はガタッと低下している。大多数の民主党に入れた人たちはもう失望してしまった。早く新しい党首の下で次の選挙に向かうというイメージチェンジをはかり、攻めていく。時間はかかるかもしれないけれど、民主党にはそれしかないという状況ですね。