久しぶりに映画"Field of Dreams"を観た

Field of Dreams

 "Field of Dreams"は、1989年製作の大変いい映画だ。
 人には、夢や後悔があるし、情熱(passion)もある。けれども、残念ながら、夢や、情熱は、年を取るにつれて失ってしまいがちだ。子ども時代に見えていた物も大人になると見えなくなってしまうことがある。映画の中では、アニーの兄弟が、その代表格として扱われている。
 その点では、"フィールド・オブ・ドリームス [DVD]"は、子どもから青年、そして大人の話で、大人はわかっちゃいないのよねという、サンテグジュペリの「星の王子様」に似ている要素がある。
 少し人生に疲れた男の情熱回帰のような映画になっているのだ。
 アイルランドアメリカ人の主人公のレイは、60年代に西海岸のバークレーで大学時代を過ごした。私も半年住んでいたことがあるけれど、カリフォルニア州のサンフランシスコは進歩的な空気が支配的な土地柄だ。パートナーのアニーも60年代の申し子のような女性で、そうした彼らが、70年代・80年代と反動的巻き返しが強まる中、夢を追いかける中で、60年代の情熱をあたかも取り返すかのようだ。
 60年代、それは、夢を見ることのできた時代であり、変革の時代であったが、ケネディ大統領の暗殺、マーチン・ルーサー・キング・ジュニアの暗殺と、夢が打ち砕かれ、萎んでしまった時代でもあった。
 さて、"Field of Dreams"には、ユーモアもある。
 往年の野球選手たちが、レイが作った野球場でプレイをするとき、"Asshole"という子どもに聞かせられない悪口に対して、子どもがいるんだぞとたしなめられるとき、”Sorry, kid.”と謝るのだが、レイとアニーの子どものカレンは”It’s OK. I don’t mind.”と答える。この時のカレンは可愛らしい。
 ちなみに映画に登場するテレンス・マンのモデルは、原作ではJ.D.サリンジャーとされている。
 先ほど、情熱回帰のような映画と書いたが、その意味では、"Field of Dreams"は、ある種のロードムービーになっている。不思議な運命に誘われて、それが何なのか情熱をもって追いかけることになるのだが、、Allman Brothers BandBrothers and Sistersのアルバムに収められているJessicaがかかるときは、ちょっと興奮する。それは旅の始まりの際の胸の高まりに違いない。
 さて後悔といえば、親子の情だろうか。"Field of Dreams"の中では、普通親子が望んでも叶わない夢が叶う。
 この映画がつくられたのは、1989年だが、その点では、現在の日本、地方は活気がなく、商店街にはシャッターが降りている今の日本の状況と似ているかもしれない。
 何もないアイオワに、人々がやってくる、最後の場面は秀逸だ。
 今のような日本にこそ、"Field of Dreams"のような映画が必要なのだろう。
 ケビン・コスナーも好演している。