岩波新書「マルコムX」を読んだ

マルコムX

 購入しても本棚に置いたままで読まない本というのは、たくさんではないけれど結構ある。
 岩波新書の「マルコムX」(2009年)もそうした中の一冊だった。
 学生時代に、アレックス・ヘイリーの「マルコムX自伝」の洋書を手にしてから、マルコムXについては随分と気になる存在だった。
 かなり昔に「プレイボーイ」のマルコムXのインタビューを読んだことがある。もちろんスパイク・リーの映画(1992年)も観た。
 これもすでに20年以上も前になるが、1992年の夏にアメリカ合州国の大西部をレンタカーでまわったことがある。その旅を終えてロサンゼルスに戻ったとき、ボーダーズだったか、本屋でマルコムX関連の本が平積みになっていたことを覚えている。近くにエリッククラプトンの「アンプラグド」のビデオが発売になっていた。
 "Malcolm X Speaks"というPヴァイン・レコード発行の2枚のCDブックもたしかその頃に日本で買い求めた。
 本書「マルコムX」でも当然書かれていることだが、「草の根黒人民衆へのメッセージ」(Message to the Grass Roots)などのマルコムXの演説を聞くと、あのワシントン大行進の評価について大変辛辣な厳しい評価がされていることがわかる。
 この点は、実はハワード・ジンの"A People's History of the United States"でも紹介されていることだ。
 マルコムXが主張していた需要な論点のひとつは、必要なものは公民権というよりはむしろ人権であるというのは、確かにそうなのだろう。
 今日Black Studiesが市民権を得ているのにも、マルコムXの功績が大きいということも、そうなのだろう。
 歴史を学ぶことの重要性、そして自分の存在を考えることの重要性も、そうなのだろう。
 マルコムXを考えると、その演説の力、言葉の力を考えざるをえない。
 お前は何者なのか。お前は何がしたいのか。この2つの質問は重要である。
 マルコムXから学ぶことは多い。