J.D.Salingerの"The Catcher in the Rye"を再読した

The Catcher in the Rye


  David Shields/Shane Salernoが編んだJ.D.Salinger(Jerome David Salinger)に関する"Salinger"という本がある。
 サリンジャーに関わりのあった人たち*1の証言をもとにしたサリンジャーの”自伝”だ。
 若き日のサリンジャーは、ノーベル文学賞を受賞した劇作家のユージン・オニール(Eugene O'Neil)の娘で、のちにチャーリー・チャップリンと結婚し*28人の子どもをもうけたウーナ・オニール(Oona O'Neill)と、軍隊に入る前に、恋仲が話題になったことがある。そうした逸話も丁寧に紹介されている。ウーナ・オニールは、「彼は作家になるとわかっていました。そうした予感がありました」("I knew he'd be a writer. I could smell it."p.58)と言っている。

 プライバシーを守るため、作品を発表せずに隠遁生活を送ったサリンジャーについて、本書は、関係者の証言をもとに、実相を浮き彫りにしていくスリラーの読み物のような体裁をとっている。そのため、興味本位の週刊誌か参考書のようにぱらぱらと読むことも可能だが、以前に購入してみたものの、まだ読了していなかった。

 そのintroductionには次のようにある。

 J.D.Salinger spent ten years writing The Catcher in the Rye and the rest of his life regretting it.
  Before the book was published , he was a World War II veteran with Post-traumatic Stress Disorder; after the war, he was perpetually in search of a spiritual cure for his damaged psyche.

 「「ライ麦畑でつかまえて」は、これまで6500万部、毎年50万部売れている」("The Catcher in the Rye has sold more than 65 million copies and continues to sell more than half a million copies a year.")本だが、サリンジャーは、10年かけて「ライ麦畑でつかまえて」を書き、残りの人生は、そのことを後悔した人生だったという。
 「ライ麦畑でつかまえて」が出版される前は、第二次世界大戦に兵士として出兵し、PTSDを患い、その後は、その救いを求め続けた人生であったとのことだ。


 これまで何度となく読んできた*3"The Catcher in the Rye"を、今回また再読してみた。

 YouTubeに、「ライ麦畑でつかまえて」のaudiobookがアップされている。
 「ライ麦畑でつかまえて」は主人公ホールデン・コールフィールド(Holden Caulfield)の語り口調に特徴があるから、audiobookは、利用価値が高い。
 次も、今回聞いてみたaudiobookのひとつ。

https://www.youtube.com/watch?v=fOogIa-cNiM

 学習参考書というよりは昔の言い方でいえば「アンチョコ」というべき、原作を読まなくてもサマリーだけを聞ける、高校生向きのsparknotesというサイトもある。
https://www.youtube.com/watch?v=WSq-WQgKnyE

*1:学生時代のクラスメートやコロンビア大学時代の作文の先生のサリンジャーに対する印象など、さまざまな証言を読むことができる。

*2:チャップリンとウーナ・オニールは、年齢差のある、いわば電撃結婚だった。オーソン・ウェルズの予言もエピソードとして紹介されている。

*3:The Catcher in the Ryeは比較的簡単な文体であるが、それでも、英語で書かれているから、簡単には読めない。残念ながら、必死に読んできたと言わざるをえない。