「<森友文書改ざん>揺らぐ安倍政治 盟友麻生氏切れず」

 以下、毎日新聞(3/12(月) 21:43)より。

 安倍晋三首相は12日、学校法人「森友学園」に関連する決裁文書の改ざん問題について、全容解明と再発防止を麻生太郎副総理兼財務相に託す意向を表明した。2012年末の第2次安倍内閣発足後、一貫して閣内で首相を支えてきた麻生氏を切れば、安倍政権のパワーバランスが崩れ、秋の自民党総裁選の行方は一気に不透明になる。しかし、麻生氏を守る限り、野党の追及は続く。いずれの選択も首相にとっていばらの道だ。

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 菅義偉官房長官は12日の記者会見で「財務相としてまずは徹底した調査が行われるよう、しっかり指揮をとっていただきたい」と繰り返した。与党内にも麻生氏の辞任は避けられないとの見方が出る中、首相官邸は打ち消しに懸命になっている。

 麻生氏と菅氏はともに安倍内閣の屋台骨を担ってきた。過去には、消費税率の引き上げに伴う軽減税率の導入や衆院解散のタイミングを巡って両氏の意見が対立したことがあり、内閣は微妙な緊張関係の上に成り立っている。首相が12日、麻生氏の続投に言及したのは、このためだ。

 政府は来年10月からの消費税率10%への引き上げを年内に決める必要がある。トランプ米政権との経済対話も麻生氏の担当だ。ここで麻生氏が交代すれば、政策課題が停滞しかねない。

 しかも、麻生氏が率いる自民党麻生派は第2派閥。総裁選で3選を視野に入れる首相は、麻生氏の協力が大前提になる。

 政府高官は「書き換えられたのは決裁書の主要部分ではなく、付随している一部に過ぎない」と指摘。官邸幹部も「あくまでも財務省理財局の文書管理の問題だ」と述べ、事態の収拾を急いでいる。自民党内にも「大事件ではあるが、致命的ではない」(幹部)という声はある。

 しかし、安倍内閣の情報公開への姿勢に疑問符が付いたのは今回が初めてではない。昨年7月には、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊部隊の日報問題で稲田朋美防衛相(当時)が辞任。今国会でも、厚生労働省が労働時間に関するデータを不適切に使用した問題が浮上したばかりだ。

 野党は当面、麻生氏の辞任を要求する構え。首相が麻生氏をかばい続ければ、内閣支持率にも影響するのは確実だ。

 首相は今国会を「働き方改革国会」と銘打ったにもかかわらず、データ問題で裁量労働制の対象拡大をあきらめざるを得なくなった。働き方改革関連法案の閣議決定のめどは立っておらず、法案を提出しても、審議日程は窮屈だ。秋の総裁選に向けて政策面で実績を重ねようという首相の戦略は揺らいでいる。

 首相の宿願の憲法改正にも暗雲が漂う。自衛隊の存在を明記する改憲には野党が反対で足並みをそろえつつあり、森友学園問題で国会が紛糾すれば、衆参両院の憲法審査会の開催も難しくなる。自民党は25日の党大会までに党の改憲案をまとめ、秋の臨時国会での発議を目指すが、そうした日程は描きにくくなる可能性がある。

 自民党内では「麻生氏が財務相を辞任しても、副総理続投や自民党副総裁など政権要職で処遇すればいい」(中堅議員)ともささやかれるが、それで野党の追及をかわせる保証はない。

 与党内では、首相や周辺の「脇の甘さ」が招いた問題との批判もくすぶる。改ざん問題の発覚で首相に対する風当たりは一層強まるとみられ、首相は求心力をどう維持するかという難題を突きつけられている。

 閣僚経験者は「麻生氏が辞任して政権維持に成功したとしても、首相自身の傷が癒えることはない」と漏らした。【松倉佑輔、田中裕之】