「元SEALDsの諏訪原健「安倍政権への“森友疑惑解明”デモ現場でみたある異変」」

以下、AERAdot連載「20代の処方箋」(2018.3.20 07:00dot.)より。

 森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で連日、徹底究明を訴えるデモが起こっている。安全保障関連法への抗議を展開した学生団体「SEALDs(シールズ)」の元メンバーらが呼びかけ、諏訪原健さんもその1人。広がりをみえるデモの参加者を観察すると、ある“異変”が……。

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 森友学園疑惑をめぐって、決裁済みの公文書が改竄されていたことが発覚して以来、路上での抗議の声が高まっている。首相官邸前での抗議行動には、12日(月)に5千人、14日(水)に1万人、16日(金)には1万5千人の人が集まった。さらに18日(日)に新宿西口で行われた街頭宣伝でも、4千人もの人々が駅周辺を埋め尽くした(参加人数はすべて主催者発表)。

 抗議の様子を見ていると、多様な人々が今回の問題に怒りを覚えていることがわかる。私自身も、周囲と連絡を取り合って、抗議を呼びかけた人間の一人であり、首相官邸前のステージから訴えかけをすることもあるが、抗議の場では、自分たちが「主催者」であるという感覚はまるでない。

 抗議の場を広く見渡してみれば、ステージ周辺以外の場所でも、あらゆるところで自発的にコールが起こっているし、ただ黙って首相官邸のほうを見つめる人もいる。周囲と話をしている人もいる。それぞれが自分にできる形で、「主催者」として抗議をしていることが一目でわかる。

 特に興味深いのは、Twitterなどを見ていると、初めて抗議行動に参加した人が多いということだ。また仕事帰りに、スーツ姿で参加する人も、これまで参加した抗議行動と比べて多く見かける。それだけ幅広い層に問題意識が浸透しているのだと思う。

 なぜこれほど短期的に、抗議の声が広がりを見せるようになっているのか。私自身は、普段の社会生活においては到底許されないようなことを、政府が当たり前のようにやっていることに対する怒りが強いのではないかと感じている。

 これまでの森友学園疑惑をめぐる国会での議論は、改竄された公文書をもとに行われていたことになる。国家の行く末に関わる国会審議の時間を、政府は自分たちの都合のいいように「印象操作」するための芝居に費やしていたのだ。

 その上、政府は今回の問題を真摯に受け止めているようには思えない。監督責任があるはずの麻生財務大臣は、記者会見でも全く反省している様子を見せない。それどころか、佐川宣寿前国税庁長官をはじめとする一部の財務省職員に責任をなすりつけるのに必死だ。

 安倍首相も、2017年2月17日に、「私や妻が関係していたということになればこれはまさに私は間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということははっきりと申し上げておきたい。」と明言していたのにもかかわらず、安倍昭恵氏の名前が公文書から消えていたことが発覚しても、あくまで無関係だという姿勢を貫いている。

 仕事などの日常生活においても、上から無理難題を押し付けられることがあるだろう。その上、問題が発覚したら、責任をすべてなすりつけられたらどうだろうか。ごく普通に考えれば、そんなことが、まかり通っていいはずがない。しかし政府は、自分たちの持てる力を使って、それをやろうとしている。

 最近の首相官邸前の抗議で、特に盛り上がるコールは、「官僚がんばれ!」や「総辞職!」だ。これらのコールには、官僚は上からの圧力に負けないで、「国民全体の奉仕者」としての自らの仕事に徹してほしい、そして政治の側がきちんと責任をとるべきだ、という思いが込められていると思う。政府にはその声を受け止めて、包み隠さずに真相を明らかにし、その上できちんと責任を果たしてもらいたい。佐川氏を証人喚問して、財務省に責任を押し付けて終わりなんてことは、絶対に許されない。

 今後も23日と、30日の金曜日の夜には、大規模な首相官邸前抗議が予定されている。また聞き及ぶ限り、土日にも抗議の場が作られる予定だ。今回の問題の真相が明らかにされるかどうか、またしかるべき人間が責任をとるかどうかは、私たちの声にかかっているように思う。今、私たち自身の力が問われている。(文/諏訪原健)

諏訪原健(すわはら・たけし)/1992年、鹿児島県鹿屋市出身。筑波大学教育学類を経て、現在は筑波大学大学院人間総合科学研究科に在籍。専攻は教育社会学。2014年、SASPL(特定秘密保護法に反対する学生有志の会)に参加したことをきっかけに政治的な活動に関わるようになる。2015年にはSEALDsのメンバーとして活動した