「需給バランス崩壊、発電所停止の連鎖 初の道内全域停電」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2018年9月6日11時59分)から。

 北海道全域の約295万戸での停電という事態が起きた背景には、発電拠点の立地に加え、本州との連系線の弱さもある。大手電力会社のほぼ全域での停電は国の電力広域的運営推進機関によると初めてだ。

 震源地に近い苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所(北海道厚真町)は165万キロワットを発電できる北海道電力で最大の火力発電所だ。地震が起きた当時は、北海道全体の約半分の電力を供給していた。

 これが地震でとまった。経済産業省によると、苫東厚真でボイラーの配管が損傷した可能性がある。北海道全体の使用量と発電量のバランスが崩壊。本来は一定に保つ必要がある周波数が下がった。周波数低下の影響で道内のほかの火力発電所も運転がとまり、離島を除く北海道ほぼ全域の停電に至ったという。

 大阪電気通信大の伊与田功教授(電力系統工学)によると、電力の需要と供給のバランスが大きく崩れると、設備への負荷やトラブルを避けようとして、各地の発電所で電気の供給を遮断する安全機能が働く。今回の地震では、北海道各地で電気の遮断がドミノ倒しのようにいっせいに起こり、すべての発電機が電気系統から離れて広域で停電する「ブラックアウト(全系崩壊)」が起きたとみられる。

 北海道では、最大の電力消費地である札幌都市圏の南東に苫東厚真発電所、西に泊原子力発電所(北海道泊村、207万キロワット)があるが、泊原発は再稼働していない。重要施設の直下に断層が走っており、原子力規制委員会の審査が続いている。

 その泊原発では午前3時25分、停電に伴い送電線からの外部電源を喪失。同28分に非常用ディーゼル電源6台が作動し、電源を確保。使用済み核燃料の冷却を続けている。

 北海道と本州のあいだには、電力をやりとりできる「北本連系線」がある。しかし、これを使うには北海道側で受け取る直流を交流に変換するための交流電力が必要で、これを調達できなくなった。

 また、この連系線の能力は60万キロワットで、苫東厚真の発電能力の2分の1に満たない。連系線の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りになった形だ。