「改革押しつけ、自らは接待」文科省汚職に憤る教育現場

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 以下、朝日新聞デジタル版(2018年9月22日10時30分)から。

 汚職事件で局長級幹部が相次いで逮捕・起訴された文部科学省で、今度は事務次官と初等中等教育局長が辞職に追い込まれた。止まらない不祥事の連鎖に、省内外から憤りやあきれる声が上がっている。

 「大学に質保証を求めている指導官庁がこれでは、やっていられない。襟を正してほしい」

 西日本の私立大の学長は21日、こう話した。汚職事件を受けて、独自色のある研究をする大学に施設費などを助成する「私立大学研究ブランディング事業」は選定過程が疑問視されて廃止が決まるなど、大学にも影響が出ている。「ただでさえ、私大は経営環境が厳しい。これ以上、不祥事が起きないよう願うしかない」と学長は語る。

 文科省は現在、大学入試改革や学習指導要領の改訂など、教育現場に大きな変化を迫る政策も進めている。関東地方の公立高校の校長は「詳細がなかなか見えず、困惑させられている。改革を押しつけるのに、自分たちは接待。現場はやりきれない」と憤った。

 不祥事は昨年から相次いでいる。「天下り」の組織的あっせんが発覚し、事務次官経験者3人を含む43人が処分され、前川喜平次官(当時)が辞職。加計学園獣医学部新設計画をめぐっては、「確認できない」とした文書が後から見つかり、管理態勢が問われた。今年に入ってからは前川氏が名古屋市立の中学校で講演した際、国会議員から照会を受けた担当課が名古屋市教育委員会に電話やメールで何回も問い合わせたことが問題になった。

 加えて、7月には東京地検の捜索を受け、局長級幹部2人が逮捕・起訴された。省内調査をした結果、他にも不適切な接待を受けていた幹部が複数明らかになり、戸谷(とだに)一夫事務次官と高橋道和(みちやす)・初等中等教育局長が21日に辞職した。

 義務教育を担当する初等中等教育局は、文科省の中枢。そのトップの高橋氏は会計課長やスポーツ庁次長などの要職を歴任し、事務次官候補の一人だった。内閣官房に出向して教育再生実行会議の担当室長も務めており、安倍政権の教育政策に深く関与してきた。

 ある中堅職員は「数々の難しい局面に対応してきた要の人。省内はショックが広がり、沈鬱(ちんうつ)な雰囲気。天下り問題で多くの人材が去った後だけに、厳しい」と語った。この職員は7月に、組織改革を求める申入書を戸谷氏に提出した有志職員の一人。「もはやガバナンスを幹部任せにしていては組織を立て直せない、という危機感と緊張感が省内に生まれている」と話した。(上野創、宮坂麻子、増谷文生)