以下、朝日新聞デジタル版(2019年4月12日5時0分)から。
自民党議員のパーティーで、議員の名前を挙げて東日本大震災からの「復興以上に大事」と発言して、五輪相を更迭された桜田義孝氏。安倍政権は火消しに躍起だが、安倍晋三首相を支える基盤がもたらした構造的な問題でもあった。復興や五輪といった重要課題に対する本気度も問われている。
与党からもゆるみ「批判」
桜田氏の失言による事実上の更迭から一夜明けた11日朝。安倍首相は首相官邸に出邸すると、記者団に厳しい表情で語った。「内閣全体で信頼を回復していき、復興に向けて全力を傾けていくことで国民の負託に応えていきたい」しかし、桜田氏は就任以来、閣僚の資質そのものを問われ続けてきた。昨年10月、五輪相就任会見でパラリンピックを「パラピック」と言い間違えたことに始まり、昨秋の臨時国会ではサイバーセキュリティーの担当閣僚ながら「パソコンを打つことはない」と答弁。今年2月には、競泳の池江璃花子選手が白血病を公表したことに「がっかりしている」と発言した。
そのたびに首相は「職責を果たしてほしい」と桜田氏を擁護し続けた。首相周辺は「今回はアウトだった。『復興以上に』と比べてはまずい」と説明するが、更迭が遅きに失したのは、自らの政権基盤を支える派閥への配慮があったからに他ならない。
昨秋の自民党総裁選で党員票は55%にとどまる中で、派閥による支援が直接影響する国会議員票を8割以上集めたことで乗り切った。とりわけ二階俊博幹事長と麻生太郎副総理が率いる二階派と麻生派の支援は、3選には不可欠だった。
直後の内閣改造では、論功行賞で派閥に最大限配慮。その象徴的な存在が、一定の当選回数を重ねながら未入閣の「待機組」だった二階派の桜田氏だ。首相は当時、自身を支援した5派閥からの初入閣が9人に上った布陣を踏まえ、「全員野球内閣」と胸を張ったが、桜田氏起用を不安視する声は当初からあった。
改造では、麻生派の閣僚を3人から4人に、副大臣も3人から4人に増やした。そのうちの一人が国土交通副大臣となった塚田一郎参院議員。首相は「忖度(そんたく)」発言が明るみに出てからも塚田氏をかばい、発言から辞任までは4日間を要した。そもそも財務省で公文書改ざんや事務次官のセクハラがありながら麻生氏を財務相として続投させてきたことを含め、自身の政権基盤を優先し、派閥に配慮を続ける首相自身が任命責任を問われている。
(後略)
岡村夏樹 大久保貴裕