「武装米兵、国道側に銃口向け射撃動作 施設の訓練丸見え」

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以下、朝日新聞デジタル版(2019/11/8 9:18)から。

 弾道ミサイル探知用の「Xバンドレーダー」が設置されている米軍経ケ岬通信所(京都府京丹後市)で、武装した米兵が戦闘訓練を行っていたことがわかった。施設内での訓練で、日米間での取り決め上事前告知の必要はないが、国道沿いでフェンス越しに見える位置だった。住民に不安が広がっており、防衛省は米軍に、今後は地元へ事前告知するよう申し入れた。

 日本海を望む丹後半島北端。地元の寺を東西に挟む形で同通信所と航空自衛隊経ケ岬分屯基地がある。

 7月11日午前9時ごろ、付近の宇川地区に住む男性は散歩中に異様な光景に出くわした。国道178号に面した通信所のゲートに差し掛かったところ、迷彩服に防毒マスク、防弾衣を身につけ、小銃で武装した十数人の米兵が訓練しているのがフェンス越しに見えた。ゲートから侵入した敵を迎え撃つような格好で、数人が国道側に銃口を向け、射撃する動作をしたという。実弾や空砲は使っていなかったものの、負傷して倒れたり担架で運ばれたりする役割の兵士もいて、実戦さながらの緊張感があったという。

 男性は「普段は警備員が見えるだけなので、武装兵の訓練を初めて見て驚いた。殺気立っていて恐ろしかった」と話す。

 同通信所は、稼働して12月で5年。米本土防衛の最前線の一つだ。東京ドームの7割ほどの広さ3・6ヘクタールの敷地はフェンスと有刺鉄線に囲まれ、無数の監視カメラが設置されている。敷地にはレーダー機材が入った大型テントや衛星通信アンテナ、管理棟などが並び、兵士の隊舎や厚生棟の建設が急ピッチで進む。

 防衛省によると、米軍関係要員は陸軍兵士や米軍が委託する米民間警備員、技術者ら計約160人。このうち普段は武装した警備員約60人が24時間態勢で検問や巡回にあたる。

 その警備はしだいに厳しくなり、2017年からは陸上自衛隊が施設を警備する警護出動訓練を始めた。3回目の昨年10月には化学兵器などに対処する要員を含む約200人が訓練を行った。

 同通信所付近の宇川地区の集落は人口約1300人で、過疎化や高齢化が進む。建設計画の浮上当初から住民らが反対運動を展開。米軍関係者による交通事故や騒音をめぐり、今も米軍側との摩擦が続く。

 それだけに今回の訓練について周辺住民らで作る「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」(永井友昭事務局長)は「テロなどに備えた訓練のようだが、住民の生活ゾーンへ銃口を向けるなどとんでもない」と批判。京丹後市基地対策室も「住民が不安を感じており、適切な対応をとってほしい」としている。

 日米地位協定は米軍に施設・区域内の管理権を認めており、敷地内での訓練に違法性はないものの、訓練の事前連絡は防衛省にもなかった。住民からの連絡を受けて防衛省が照会したところ、米軍は「即応性を維持するために必要な訓練だった」と説明。防衛省は「事前に連絡できるなら、地元にも伝えて欲しいと米側に申し入れた」という。

 トランプ政権になり、米軍は北朝鮮弾道ミサイル発射に備え迎撃態勢を強化。昨年10月には経ケ岬など日本やグアムの通信・迎撃施設を統括する司令部が神奈川県内の米軍施設に新設された。基地問題に取り組む京都平和委員会の片岡明理事長(56)は「米が日本に展開したレーダー施設が、米本土防衛のための最前線に位置づけられていることがはっきりした。施設が攻撃対象になることまで織り込んでおり、容認しがたい」と話している。(谷田邦一)

Xバンドレーダー 
 米国が開発した弾道ミサイルの追尾・探知用の移動式レーダー。正式名称は「TPY2」。使う周波数帯からXバンドと呼ばれる。ミサイルが飛来する空域を監視し、1千キロ以上先の弾頭の形状を精密に識別する能力がある。とらえたデータは、日米のイージス艦やミサイル迎撃部隊などを結ぶネットワークで共有される。