「首相に憤る被爆者「何のため長崎に」 あいさつにも失望」

 

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 以下、朝日新聞デジタル版(2020年8月9日 20時45分)から。

 

 長崎の被爆者5団体の代表らが9日、長崎市内で安倍晋三首相らと面会した。この日の平和祈念式典のあいさつで安倍首相は「被爆者の方々と手を取り合って」「被爆者の方々に寄り添い」と述べたが、昨年の面会で求めた長崎原爆資料館訪問は実現せず、被爆者が参加を求める核兵器禁止条約からも距離を置く。被爆者からは「政府の真剣さが感じられない」という声が漏れる。
 式典後に面会し、5団体が政府への要望書を手渡した。政府側は、条約に参加する代わりに核兵器廃絶に向けて「立場の異なる国々の橋渡しに努め、国際的な議論を積極的にリードしていく」。国によって定められた長崎の被爆地域外にいたため被爆者と認められない「被爆体験者」についての救済について、最近の研究を踏まえた判断を求める被爆者側に対し、「(被爆地域外で)健康に問題のある量の放射線被曝(ひばく)があったという科学的知見は今のところない」などと、従来の見解を繰り返した。
 長崎原爆被災者協議会の田中重光会長(79)は昨年、首相に原爆資料館訪問を求め、「被爆者からの宿題です」と訴えた。今年の要望書では「資料館を自身の目で見て、感じて、考えてください」との一文が盛り込まれたが、首相から具体的な回答はなかった。面会を終え、「寄り添うというなら、被爆者の言うことを聞いてほしい。何のために長崎に来るのか、その意味を考えてほしい」と憤った。
 2017年の面会で核兵器禁止条約に背を向ける首相に「あなたはどこの国の総理ですか」と強い口調で迫った長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会の川野浩一議長(80)は「『橋渡し』というが、米国の『核の傘』の下でぬくぬくして、何かやっているのか。もっと中身のある答えがほしい」と不満を話した。原爆投下から75年が経ち、被爆者の平均年齢は83歳を超えた。「被爆者にとってはぎりぎりの段階。答えを出すのが日本政府の役割なのに、何も解決していない」
 安倍首相は面会で「首相として9回目の式典参加」と述べたが、式典での首相のあいさつにも失望の声が聞かれた。「手を取り合って」「寄り添い」という言葉も含めて、今年も広島の式典のあいさつと大半が同じ文言だった。長崎県被爆者手帳友の会の朝長万左男(ともながまさお)会長(77)は「それぞれの都市に特徴のある事項を見つけ出して、それに対してのコメントが入っていれば、政府が真剣だということを我々も感じられるが、それが無い」と批判した。(新垣卓也、真野啓太、佐々木亮