スパイク・リー監督による感動的な傑作コンサート映画"American Utopia"。
ブロードウェイでの"American Utopia"のショーが始まる前の、カーテンに描かれたイラストを憶えている人は少なくないだろう。そこには、コンサートがおこなわれた場所なのか、合州国各地の地名やデビッドバーンや出演者のダンスやしぐさが描かれていた。
American Utopia The Book: David Byrne’s Lyrics and Maira Kalman’s Theater Curtain – New York Theater
イラストを描いた作者は、NYで活躍するイラストレーターであるマイラ・キャルマン(Maira Kalman)氏。以下のインタビューでは触れていなかったと思うが、氏とデビッド・バーン氏は、絵本"Stay Up Late"*1でも共作している。
マイラ・キャルマン氏は、雑誌The New Yorkerの表紙の絵も描いている。
このイラストレーターのマイラ・キャルマン氏とデビッド・バーン氏が昨年10月に"American Utopia"という大人向けの詩集絵本のような本を出版した。
「デビッド・バーンの言葉とマイラ・キャルマンのアートで、私たちみんなのつながりを啓発的に祝う」本になっているようだ。
American Utopia — Maira Kalman
たとえば、NPRに、書評が載っている。
ニューヨーク市立博物館(Museum of the City of New York)主催による、マイラ・キャルマン氏とデビッド・バーン氏を呼んでのズーム会議によるインタビューがYouTubeにアップされている。(American Utopia : David Byrne and Maira Kalman in Conversation with Alison Stewart 2021年1月13日)
司会(moderator)はAlison Stewart氏。
インタビューの中でわかったことは、詩集絵本に書いてある地名が、全米中に実在する変わった名前の街らしいということ。
ステージカーテンに書いてあった合州国の地名が、コンサートをおこなった全米各地なのか、全米中に実在する変わった名前の街なのか、判然としなかったのだが、インタビューでは、全米中に実在するへんてこな地名に言及されていて、コンサートをおこなった地名リストというものではないようだ。
これはマイラ・キャルマン氏のアイデアと言っていたが、たとえば、オハイオ州にアシュタビュラ(Ashtabula)という街がある。Urban Dictionaryで調べてみたら、この地名は「巻き糞よりも価値がない」という意味で知られている街らしい。
インタビューでは次のような地名もへんてこな地名として言及していた。
- Last Chance*2, Colorado(ラストチャンス、コロラド州)
- Goofy Ridge*3, Illinois(グーフィーリッジ、イリノイ州)
- Frogville*4, Oklahoma(フロッグヴィル、オクラホマ州)
- Two Egg*5, Florida(ツーエッグ、フロリダ州)
それで、そうした地名を登場させた理由は、世の中には、いろいろなところでいろいろな人々が暮らしている。そのことに想像力を働かせたいというようなことを言っていた。
スコットランド出身のデビッド・バーンもイスラエル出身のマイラ・キャルマンもいずれも移民であり二人はいずれもニューヨークで活躍するアーティストであり、ニューヨーク市立博物館が主催であるため、ニューヨークについての話題が多かった。
出演者がニューヨークの街でジテンシャに乗っている映画の最後の場面を司会者が指摘して、ジテンシャについての質問もしていた。
デビッド・バーンは、Democracy Now!のインタビューと同様に、ニューヨークでは、ジテンシャは効率がいい(efficient)し、自由な感覚(sense of freedom)がもてると答えていた。
デビッド・バーンによれば、今の時代は、狂気が支配しているが、確実に変化は生じている。移行期という時代状況ではないか。人々の気持ちも怒りや不安が渦巻いていて、一人ひとりにとってはローラーコースターに乗っているような気持の浮き沈みがある(David Byrneは、"emotional roller coaster for everybody"という表現を使っていた)。だからこそ人々の連帯・団結が必要ではないのかと。
ニューヨークは、寒かったり、車も多いので、空気も排気ガスのにおいがする*6が、戸外は気持ちがいい。
料理の話も出て、デビッド・バーンは、チキンエモーレィ(chicken mo-lay (mole))*7が好きだという。
マイラ・カルマン氏とデビッド・バーン氏のインタビューは、他に、以下がある。
以上、書き終えてから、以下の記事を見つけた。
ハドソン劇場のマイラ・カルマン氏の緞帳(作品)を見ることができる。
マイラ・カルマン氏の夫がTalking Headsの"Remain in Light"のアルバムカバーを手がけたという話は初めて知った。そして特筆すべきはデビッド・バーン自身のコメント。そのコメントが素晴らしい。
是非ご一読を!
現在公開中の映画『アメリカン・ユートピア』が、なんかすごいことになっている。その元となったステージを、デイヴィッド・バーンの独占メッセージと共にレポート! |ヒルズライフ HILLS LIFE
*1:Stay Up Late Real — Maira Kalman
*2:Last Chanceは「最後のチャンス」ほどの意。
*3:Goofy Ridgeは「間抜けな尾根」ほどの意。
*4:Frogvilleは「カエル村」ほどの意。
*5:Two Egg「二個たまご」ほどの意。通常ならEggsと複数形になるところが、複数形になっていないということは、「数意識」のない、eggという境界のない「たまご」ということになる。
*6:David Byrne は ”the car fumes””という造語を使っていた。
*7:モーレィあるいはエモレィとは、メキシコ料理のソースのこと。このソースをつかったメキシコ料理。おそらくmole sauceこと。ラングストン・ヒューズの自伝"The Big Sea"に出てくる。