吉川美代子氏が言うように、共産党は「それまで何も言わないで、世間の注目が集まってるこの時に、急に言い出」しているのか

 自分が小学生の頃、子ども向けマンガ雑誌少年マガジンだったと思うが、KKK*1について知った。戦前ならともかく戦後、こんなカルト*2的団体が存在するのは他国の話であって、まさか自分の生まれた国に存在するなんて想像だにできなかった。

 統一教会の学生サークルといわれる原理研は自分が学生時代、自分の通っていた大学の学内に存在し活動していた。

 統一教会については、しばらく聞かないと思っていたら、安倍元首相殺害事件をきっかけに、「政治のちから」(有田芳生氏)によって取り締まりがおこなわれず、それどころか、旧統一協会の放置(泳がせ政策)と、旧統一協会を選挙に利用する自民党と旧統一協会との蜜月関係*3が進行・発展していたことが発覚した。

 マスコミもふくめて真のジャーナリズムは、真相究明のために、この問題を掘り下げることが期待されている。マスコミも、この問題にどれだけ踏み込むのか、その報道姿勢が、はからずも、本物と偽物とを仕分ける「踏み絵」の役割を果たしてしまっている。

 報道は、量的・質的に、その報道内容が検証されなければならない。ここにきて、「報道ステーション」(テレビ朝日)が、連日ほぼ旧統一協会問題を報じていないと聞いた。もしこれが事実で、量的にほぼ報道していないとなれば、「本物」でないと言われてもしかたないだろう*4

 ここで話題にしたいのは「情報ライブ ミヤネ屋」(読売テレビ)である。

 日頃は見ていないが、テレビ全体として旧統一協会関係についての報道量が少ない中、連日「情報ライブ ミヤネ屋」が時間を割いているというので、今日*5見てみた。

 紀藤弁護士を起用し、尺も(時間も)とって奮闘していると感じた。宮根誠司氏の差配も悪くない。

 女性アナウンサーがボードを使って各野党の今後の対応方針を読み上げ*6説明したのち、宮根氏が、こうした野党の立憲の会合に出席したという紀藤弁護士に尋ねた。

 紀藤正樹弁護士は、「この問題は、立憲民主党だけでやる問題ではない」「一国の元首相、しかも8年8カ月という憲政史上最長の元首相が殺害されたという国際的にも大問題な事件…。この問題を一党で検討するというのは間違っていまして、超党派で、超党派で、この問題をやるべきだということを強く言いました」と、立憲民主党共産党・維新・自民党も含めて超党派で取り組んでもらいたいと強調していた。あわせて紀藤氏は、弁護士としては、被害者がいたから、この事件に取り組んでいる。野党には、政局とか政争の具*7にしてほしくないとも強調した。

 ここで、宮根氏が、「吉川さん、山上容疑者がおこなった凶行。これはけっして許されることではないのですが、われわれからすると、憲政史上、最も長く総理をつとめられた方が凶弾に倒れた。その背景にひょっとすると、統一教会なる宗教団体が背景にあるかもしれない。そして被害者の方も多数出ているという報告がある中で、これはやっぱり、紀藤先生も使いましたけど、政争の具じゃないですよね、超党派で、超党派でやらないと」と、吉川美代子氏に発言を求めた。

 すると、吉川美代子*8氏は、「やっぱり、共産党などの、コメント見てますとね。15年の、その統一教会の名前変えるときの政治的圧力だとか、霊感商法というんですけど、これはもう90年代からもうずっと紀藤先生をはじめとした弁護士の方が被害者救済でずっと闘って活動してらして、それまで何も言わないで、このときに、世間の注目が集まっているこの時に、急に言い出すっていうのは、ちょっと一部パフォーマンスっぽいなっていう気がしてしまうんですね。だから本当に必要なのは、実際に被害者がいて、食べるものもなくなっちゃうくらい、全部お金を出しちゃった人もいるっていう、そういうことをきちっと取り上げてほしいなと思いますね」と発言した。

 この発言には、心底驚いた。イスから転げ落ちそうになるくらい私が驚いた吉川氏の発言は以下である。

 それまで何も言わないで、このときに、世間の注目が集まっているこの時に、急に言い出すっていうのは、ちょっと一部パフォーマンスっぽいなっていう気がしてしまうんですね。

 (うん?、まさかこれは共産党のことをさして吉川氏は発言したの?)

 わたしは耳を疑ったが、「それまで何も言わないで」とか「パフォーマンス」というのは、ほんとうに共産党のことをさして言っているのだろうか。

 吉川氏は、「共産党などの」とか「一部パフォーマンスっぽい」とか発言されているので、少しあいまいにも聞こえるが、しかし、ふつう「共産党」のことをさしていると理解するのが通常であろう。

 何故驚いたかといえば、もし本当にこれが共産党のことを言っているだとすれば、「それまで何も言わないで」とか、「急に言い出す」とか、「一部パフォーマンスっぽい」というのは、わたしの認識(世間の認識でもあると思う)とは全く違っているからだ。言い換えれば、コメンテーターの発言としては全く政治的教養の感じられない発言に聞こえてしまったからだ。

 旧統一協会は政治的には勝共連合とつながっている。勝共連合共産主義運動に勝つことを目的にしている団体だから、旧統一協会勝共連合共産党を目の敵にしていることは歴史の常識だろう。であれば、共産党が「それまで何も言わないで、このときに、世間の注目が集まっているこの時に、急に言い出す」(吉川美代子氏)ということはありえない。これを私は証拠*9 *10を示して実証的に「ありえない」と言っているではない。吉川美代子氏とは共有できてないようだが、日本の戦後史を少しでも学んだことがある人ならよく知られた政治的教養と思うからだ。

 続いて宮根氏は、「(反社会的な)そういう団体だとするならば、そうした団体と政治家との距離感」が大事だと、コメンテーターの本村健太郎弁護士にコメントを求めた。

 本村氏は、統一教会問題は、20年前は絶対ダメな問題(NGの問題)として社会問題として知られていたが、いつの間にか、政治家が取り込まれていった。政治家の責任も重いという有意義な発言をしていた *11

 これを正しく受けて、宮根氏も、「われわれメディアも取り上げなかったっていう責任は痛感しないといけないと思うんですが」と的確な発言をしていた。

 以上の文脈から振り返ってみると、吉川美代子氏のコメントは、番組の文脈から浮いていないだろうか。文脈に全く合っていないということがわかる。

 わたしが感じたことは、第一に、吉川美代子氏の発言は、事実として違っている可能性がある。20年前に旧統一協会問題が、社会的によく知られていたのは、統一教会の圧力にもかかわらず、闘う弁護士の先生方、闘うジャーナリズム、圧力に屈しなかったテレビもふくめたマスコミの報道によるものだろう。そこには共産党による報道も当然含まれるはずだというのが私の推測だ。

 第二に思うことは、吉川美代子氏のコメントは、番組の文脈を無視した発言ではないかということ。かなり浮いた発言となっていて、はじめから「パフォーマンス」云々という表現を使いたいという意図(悪意と言ってもよい)があるかのように聞こえたことだ。長年アナウンサーをやってきた方とは思えない発言だった。

 吉川氏の発言は事実として違っている可能性がある。もし発言が事実でないとすれば、テレビは、せめて事実にもとづいた発言のできるコメンテーターを使っていただきたいものだ。

 と、推測的な結論を書いてこの一文をしめくくろうとしたら、「デイリースポーツ」の次の記事をたまたま見つけた。

吉川美代子氏 共産党の旧統一教会追及は「パフォーマンス」 (msn.com)

 この記事によれば、吉川美代子氏の発言は、そうとるのが当然と私自身も思ったが、吉川氏の名誉のために万一と考えたのだが、「デイリースポーツ」もやはり「共産党」をさしていると考えているようだ。それにしても、共産党は、旧統一協会の問題をこれから追及するのであって、それを「パフォーマンスっぽい」とコメントする論理がわからないとあらためて思った。あの場面で吉川氏がコメントすべきは、「(どの政党も政争の具とすることなく)超党派でやってもらいたいですね」「(被害者に寄り添い)パフォーマンスに終わらせることなく、反社会的な旧統一協会と政治家の癒着の問題を徹底して究明してもらいたいですね」というような内容のコメントであろう。共産党についてだけ言うのはやはり文脈が合わないと思う。

 けれども、デイリースポーツは言う。

 吉川氏は紀藤氏らが1990年代から旧統一教会と戦ってきたとし「(当時は)何も言わないで、世間の注目が集まってるこの時に急に言い出すっていうのが、ちょっと一部、パフォーマンスっぽいなっていう気がしてしまうんですね」とバッサリ。(デイリースポーツ)

 なにが「バッサリ」なのか、ちっともわからないが、先にも書いたけれども、個人的に私自身が赤旗などの実証的なエビデンスをすぐに出せるわけではないが、ほんとうに共産党は「(当時は)何も言わな」かったのだろうか。「それまで何も言わな」かったのだろうか。「(当時は)何も言わないで、世間の注目が集まってるこの時に急に言い出」しているのだろうか。「ちょっと一部、パフォーマンスっぽい」のだろうか。

 このままでは勝手な思い込みの言いっぱなしになってしまうので、少しエビデンスも調べてみようと思う。

*1:KKK団については、たとえば、クー・クラックス・クラン - Wikipedia

*2:江川紹子氏によれば、「カルト」とは、「「ネガティブな意味を含むので簡単に使うべき言葉ではありません。憲法も『思想・良心の自由』『信教の自由』を保障しています。その上でカルトを定義するなら『自分たちの信念を絶対視し、それに基づいて人権侵害そのほか、反社会的な行為をする団体で、巧みに他者の心を支配し、しばしばほかの考え方を敵視する』」と喝破されている。

*3:統一協会と関連する政党は自民党のみならず立憲民主党・維新・国民民主党、はたまた公明党とも、その関係が取りざたされている。今後の究明が待たれるが、自民党との関係が最も多いと言われている。

*4:報道ステーション」は、7月12日の放送で、旧統一教会が放送前日に開いた会見を特集。世界平和統一家庭連合の田中富広会長が、安倍元首相と祖父・岸信介元首相の関与を否定し、『岸元首相が何か特別な計らいをしたとか、あるいは特別な影響を与えているかということはまずないと思います』と発言した部分を放送した。この特集後、大越キャスターは「宗教団体への積年の恨みということを供述していますが、なぜその恨みの矛先が一足飛びに安倍元総理に向かったのか。その理由として、祖父の岸元総理大臣、安倍元総理大臣と宗教団体との関係性を挙げていますけれども、これは全く、到底理解できない中身となっています。徹底した動機の解明を待ちたいと思います」と締めくくったという。統一教会の教祖・文鮮明が創設した反共主義政治団体である国際勝共連合の名誉会長・笹川良一氏が初代会長を務めた公益財団法人が日本財団。大越キャスターはこの日本財団のアドバイザリー会議委員を務めているようだ。そこから大越キャスターに疑念が向けられネットで話題になっている。こうした疑念にたいして「報道ステーション」側から今のところ説明はないようだ。

*5:2022年7月22日午後1時55分~3時50分。

*6:画面には、「共産 小池晃書記局長「今後追及していく主な内容」・高額献金・違法勧誘の実態 ・“統一教会“と議員の癒着の実態 ・2015年の教団名称変更に関する政治的圧力の有無」「立憲  西村智奈美幹事長  “統一教会”等による被害等を調査・検証し対策を立案する」「 維新  日本維新の会  松井代表  我が党の国会議員に(教団との)関係性についてはしっかり聞き取り調査をしたい」という各野党の方針の概要が表示されていた。

*7:「政争の具」とは、「政争に勝つための目的で利用する事柄や手段」のこと。たとえば「教育問題が政争の具にされる」というように使われる。

*8:吉川美代子氏の画面の肩書は以下のとおり。「TBS入社後37年間 アナウンサーとして活躍 京都産業大学 現代社会学部の客員教授

*9:統一協会 - キーワード(赤旗) (jcp.or.jp)

*10:たとえば、2000年代の話ではあるけれど少し調べるだけでも、次のようなものが出てくる。2002年 統一協会の被害続出/ボランティアと偽り集団結婚/公立高校で勧誘/霊感商法弁連 政府に対策申入れ (jcp.or.jp) / 2006年 統一協会の集団結婚・大会/安倍長官らが祝電/韓国「世界日報」報道 (jcp.or.jp)/2021年 旧統一協会系集会にメッセージ/安倍前首相「総裁に敬意」/宣伝利用で霊感商法被害拡大の恐れ (jcp.or.jp) 

*11:「政治家のかなりの数の方が統一協会と関係があったということがいま発覚して慌てていらっしゃると。20年前だったらすごくあれだけ統一教会の社会問題がワーッととひどかった。当時だったら絶対統一協会なんて絶対ダメだ、NGだという感覚があったのが、いつの間にか忘れていったのか、薄れていったのか。だんだんと政治家のほうに統一協会がなんとなく取り込まれてきた(引用者注:統一協会のほうに政治家が取り込まれていったという趣旨での発言)という経過があってということだと思うんですが。その過程の中でそれを許してしまった政治家の方々の責任は非常に重いですから、あらためてもう一回きちんとあぶりだしてもらいたいと思います」<本村健太郎弁護士>