マオリ語の授業を初めて受けて、少し考えた

 月曜日の応用言語学の授業での問題提起は、文法は外国語の言語習得に必要か否か、必要なら、どの時期にどの程度、教えるべきかというようなことだったが、これに答えるのに、マオリ語の授業での経験が役立ちそうだ。
 マオリ語という全く新しい言語を今週2回授業で学んだのだが*1、外国語教育で、まず第一に大事なことは、教師の人格と力量である。私がいま習っているヘミ(仮名)という教師は、マオリ語の母語*2話者である。それで、なおかつ英語に堪能である。つまり、コトバを教えるに足る資格があり、信頼感がある。教師に対する信頼感が得られるような実力、まずこれが大事である。この点で私が授業を受けているこの講師は合格である。
 次に指導体制であるが、外国語の授業は、教師が得意そうに講義をしているだけではダメだ。外国語教育は音楽や体育と同じように、生徒にやらせないといけない。外国語教育には、いわばトレーニングの面がある。その点、週2回の授業の他に、チュートリアルといって、1時間の相談日が生徒に与えられている体制はすぐれている。宿題に対する質問なども、チュートリアルでおこなってよい。いわばフィードバックの時間である。今日、3人のうちの2人のメンター(師匠)を講師を通じて個人的に紹介されたのだが、一人はジョン(仮称)といって、とても親切そうなマオリの大男だった。彼のイギリス語はアクセント(訛り)が少なかった。以上に加えて、ラボでの練習がある。これはカセットテープでおこなうようだ。つまり、ヘルプの思想で、コトバを学ぼうとする学生を徹底して導いてくれるのである。
 外国語指導の場合、母語話者の体制がしっかりしていることと、ヘルプの思想を徹底することがなんといっても重要だ。自分のものではない外のコトバを学ぶのであるから、学習者にたとえ意欲があっても、ヘルプしてくれる体制がなければ、学生の学習意欲はすぐに萎えてしまうだろう。

*1:マオリ語の授業は、週に二回あり、それとは別にチュートリアルという時間も設定されている。応用言語学の授業は、週に一回、3時間の講義である。

*2:母語と母国語は厳密に区別されないといけない概念である。言語学者田中克彦氏の労作、1981年に発行された「ことばと国家 (岩波新書)」を参照のこと。