冬の南半球には、「はっぴいえんど」の「ゆでめん」が合う

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はっぴいえんどの「ゆでめん」
 南半球のニュージーランドは、いま冬である。昨日などは、南島の各地の最低気温は軒並みマイナスを記録した。こちらは、「南風」が日本でいう「北風」。私のいる北島よりも南島の方が、南極に近く寒いのだ。
 大学まで20分ほど歩いて通っているのだが、私は歩いて通うのが好きだ。日本の満員電車を思えば精神衛生上、全く問題がない。小鳥の声を聞くのも好きだが、最近はマオリ語のテープを聞いて通ったりしている。ときには音楽を聞くこともあり、昨日はiPodで、「はっぴいえんど」を聞いた。これは1970年の作品だ。
 日本は酷暑だというから、今頃は、はっぴいえんどの2枚目「風街ろまん」の「ぎんぎんぎらぎらの」「夏なんです」なんだろう。台風なんかもテーマになっているから、はっぴいえんどの2枚目はちょっと夏向きである。
 でもニュージーランドの今の季節は、はっぴいえんどの通称「ゆでめん」という1枚目の方がぴったりだ。

 青年の一人立ちをテーマにした「春よこい」。

     お正月といえば
     炬燵を囲んで
     お雑煮を食べながら
     カルタをしてた のです


     今年は一人ぼっちで
     歳を迎えたんです
     除夜の鐘がさびし過ぎ
     耳を押さえて ました


     家さえ飛び出なければ
     今頃みんなそろって
     おめでとうが言えたのに
     どこで間違えたのか


     だけど全てを賭けた
     今はただやってみよう
     春が訪れるまで今は遠くない はず


                         (「春よこい」)


 流れる人並みはここでは皆無だけれど、小雨の多いハミルトンに「12月の雨の日」もぴったりだ。

     水のにおいが
     まぶしい通りに
     雨に疲れた
     人が行きかう
     雨上がりの街に
     風がふいにおこる
     流れる人並みを
     僕は見てる
     僕は見てる


     雨に病んだ
     乾いた心と
     凍てついた空を
     街陰がふちどる
     雨上がりの街に
     風がふいにおこる
     流れる人並みを
     僕は見てる
     僕は見てる


                         (「12月の雨の日」)

 とても叙情的な「朝」はニュージーランドの冬の朝そのものだ。

     ・・・
     なんて眠りは
     君をきれいにするんだ


     いま僕の中を
     朝が通り過ぎる
     顔をそむけ
     一人で生きてきた


     何も見なかった
     何も聞かなかった
     そんな今までが
     昔のような気がする


     もう起きてるの
     眠そうな声
     眼をうすく開けて
     微笑みかけてる
     何も言わずに
     息を吸い込む僕は暖かい
     窓の外は冬

                              (「朝」)


 「かくれんぼ」「しんしんしん」などもいい。

 日本語でロックは可能かなんて真面目に論議をしてた頃、音楽的にはバッファロースプリングフィールド(Buffalo Springfield)やザバンド(The Band)から学んでつくったらしいが、日本の冬の季節の情景をうたったはっぴいえんどの「ゆでめん」は、広い道路と平屋の家屋が延々と続くニュージーランドの住宅街にも、不思議と合う。先に紹介した唄の歌詞の日本語も素晴らしい。
 さぁ、今日は、日曜日。
 近くのハミルトンガーデンにでも散歩に行ってみようか。