野蛮な法律

ハミルトンガーデンの中国庭園入口

 昨日もらったパンフレットの中に、箸の使い方や十二支の説明があって、アジア文化をほとんど知らない人用の内容だと思ったので注意して読まなかったのだが、家に帰ってあらためてその刷り物を眺めてみると、箸の使い方や十二支の説明と一緒に、”A Barbarous Measure”と題した一文が掲載されている。中国語で「横蛮的法」と題名にあるから、おそらくA Barbarous Measureの中国語訳だろう。
 barbarousはbarbarian(「野蛮人」)に関係していて、私の記憶に間違いなければ、ときの主流言語であったギリシャ語、今でいえば英語も喋れぬ野蛮人というよそ者をバカにしたコトバだから、バルバロスは、「野蛮な」という意味だ。measureは、「措置」「政策」ということから、「法案」「条例」という意味がある。「措置」の方がニュアンスとして近い気がするけれど、中国語訳も参考にして、ひとまずここでは、法律と訳しておこう。
 以下、そのパンフレットに掲載されている全文を私なりに訳してみた。


 人頭税と中国系ニュージーランド


 組織だった中国人の一番最初のグループがニュージーランドに到着したのは1866年のことでした。彼らは招待されてやって来たので最初は歓迎されていたのですが、人種差別的な態度がすぐに表面化し、ヨーロッパ人の邪悪な偏見が全土に浸透し始めました。1871年初頭に中国系移民を制限する要請が何度もなされ、1887年には中国人移民法ができて、10ポンドの人頭税が導入されました。1896年にはこれが100ポンドに大幅値上げされましたが、これは10年間の収益と等しいものでした。
 他のどのエスニック集団も人頭税を要請されたことはありませんでした。これはもっぱら中国系移民をニュージーランドに入国させない企てとして意図されたものでした。こうした差別的扱いを目的として、ある特定の人種だけをこのように標的にすることは、屈辱と苦痛の原因となるものでした。
 こうして1934年に至るまで、およそ30万8千80ポンドものお金をニュージーランド政府は中国系移民から徴収致しました。1934年にこの税金は停止され、1944年には公的に廃止になりました。2002年2月、この支払いを強制した「野蛮な法律」に対して、ヘレン=クラーク首相は、中国系ニュージーランド人に正式に謝罪しました。


 箸の使い方と十二支の説明の間に、こうした内容が掲載されているところが中国のすごいところだと思う。